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残業管理はなぜ必要? 目的や管理が難しくなる原因、有効な管理方法を解説

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残業管理はなぜ必要? 目的や管理が難しくなる原因、有効な管理方法を解説

労働基準法を遵守するためには、残業時間の厳密な管理が必要です。しかし、残業時間の正確な把握と適切なコントロールは簡単ではなく、それを阻む多くの要因があるのも事実です。
本記事では、残業管理の必要性や管理を困難にする原因と、有効な管理方法について解説します。残業管理の手法を見直し、生産性の向上やコスト削減を実現すると共に、働きやすい職場づくりを目指しましょう。

残業管理ができなかった場合の弊害

長時間労働の問題点が叫ばれる昨今、企業は、従業員の残業時間を把握するだけでなく、積極的に残業時間のコントロールをしなければならない状況になっています。
残業管理を厳密に行わなかった場合、下記で解説するような大きな問題に発展しかねません。

長時間労働によるトラブルの発生

長時間労働は、生産性の低下や離職率の増加、人件費の増加といった多くの問題を引き起こします。残業時間の管理が不十分だと長時間労働が常態化し、下記のような様々なトラブルに発展する可能性があります。

長時間労働がもたらす悪影響
  • 長時間労働による集中力の低下から、生産性が落ちミスが増える
  • 従業員のモチベーションが下がり、質の高い仕事ができないようになる
  • 拘束時間が増えることで、従業員の心身の健康が損なわれるおそれがある
  • 離職者が増加する
  • ブラック企業であるという口コミが広がり、企業イメージが低下する
  • 求職者が応募をためらうようになり、優秀な人材が集まらない
  • 残業が増えることによって人件費が膨らむ

これらのような問題が複数発生すると、場合によっては事業の継続が不安定になるような事態にもなりかねません。

労働基準法違反による罰則適用

労働基準法によって、元々労働時間の上限は「1日8時間、1週間に40時間」と定められていて、その上限を超える残業については、労使間で36(サブロク)協定を締結していれば可能とされていました。そして、36協定による残業時間の上限については厚生労働大臣の告示で規制されているだけで、法律による規制や罰則がなかったため、長時間労働が社会問題化しました。
そのような背景から、2019年4月に働き方改革関連法によって労働基準法が改正され、残業時間の上限について下記のような規制が導入されています。この規制を守らなかった場合は、企業や経営者に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがあります。

働き方改革関連法で改正された残業時間の上限規制
  • 36協定を締結した場合でも、原則として月45時間、年360時間を超える残業は不可
  • 臨時的な事情がある場合、特別条項付き36協定を締結すれば上記の制限を超える残業が可能だが、その場合も「年720時間以内」「複数月平均(2・3・4・5・6か月それぞれの平均)80時間以内」「月100時間未満」の範囲内に収まっていなければならず、月45時間を超えることが許されるのは年6か月まで

残業管理を従業員任せにするのではなく、企業側が従業員ごとの残業時間を把握し、管理しなければならないのです。

残業管理が困難になる原因

残業管理が困難になる原因は、管理側、従業員側それぞれに存在しています。残業が減らない背景には、下記のような原因があることを把握し、適切な残業管理が行えるように改善していきましょう。

管理側に長時間労働を美徳とする意識がある

管理側が残業を問題視していなかったり、長時間労働はがんばっている証拠だという意識があったりすると、残業管理が適切に行われないリスクが高まります。
例えば、企業内で下記のような状況が常態化しているようでは、残業時間を正しく管理し、コントロールすることはできません。

残業管理の弊害となる企業文化
  • タイムカードを打刻した後にサービス残業をしていても、管理者が問題視しない
  • チーム内に定時で帰りにくい空気ができていても改善しない、あるいは管理者側がそういう空気を作ろうとする

業務量が適正な範囲を超えている

人員数に対して業務量が過大だと、長時間残業をせざるをえない状況に陥ります。いくら管理者側が残業時間をコントロールしようとしても、常に残業しなければ処理しきれないような業務量になっている場合には、残業は減りません。

業務量が多すぎる状態で「残業時間を月20時間以内にするように」といった指示を出すと、サービス残業や自宅への仕事の持ち帰りといった問題が発生する原因になります。日常的に残業しないと対応できない業務量を抱えている場合は、人員の補充といった根本的な解決が必要です。

生活のために残業をしたい従業員がいる

残業代のために、あえて必要のない残業を行う従業員がいる場合もあります。そのような事態を放置すると、全体の生産性の低下や人件費の増大といった問題を招きます。本来であれば所定労働時間内で終わるはずの業務量を、無駄な残業をしてこなしていることになるため、正確な工数管理や残業管理もできなくなる上、無駄なコストがかかっているともいえるでしょう。

こうした残業は、「生活残業」と呼ばれます。従業員がお金のために不要な残業を行うことがないように、評価制度や残業ルールの見直しと、管理の徹底が必要です。

有効な残業管理の方法

適切な残業管理には、そのための環境整備が必須です。残業時間を管理できるような環境を作るには、下記の6つの方法があります。

1. 残業実態の把握と業務時間の平準化

残業を適切にコントロールするためには、まず、現状を理解しなければなりません。部署ごとに、各従業員の残業時間と理由を確認する必要があります。
特に、残業時間が多い部署や、常に一定の残業が発生している部署については、なぜそのような状況にあるのかを把握することが必要です。また、業務量が適切に配分されているかどうかを確認するために、部署の中で誰がどのような業務を担っているのかの確認も重要となります。

ただし、業務量の比較は簡単ではありません。売上高や顧客数だけで業務量を把握しようとしても、かかる手間はケースバイケースで異なるのが通常です。異なる業務をしている従業員同士の業務量を比較することもできません。
同じ業務でも従業員のスキルによってかかる時間も異なるため、各業務におけるそれぞれの担当者のスキルやかかった時間、業務の進め方などを確認し、業務分担を再検討すると共に、無駄な仕事は排除して効率化を図っていくことが大切です。

2. 残業時間と申請に関するルールの導入

必要性の低い残業は、残業を事前申請制にすることで抑止できます。上司に対して、理由と見込み時間を申請しなければ、残業自体ができないというルールの導入を検討しましょう。
誰でも無闇に残業ができる仕組みになっていると、業務以外の雑談でタイムカードを押すのが遅くなった、翌日でも間に合う仕事を定時後に行っているといった問題が出てくる可能性があります。事前申請制を導入すれば、業務上やむをえない場合のみ残業をするようになり、生活残業の防止や、残業に対する従業員の意識変化につなげることも可能です。申請から残業の状況を逐一確認すれば、残業の実態も把握できます。

また、全社的に残業を減らす施策としては、ノー残業デーが挙げられます。定時になったらパソコンを強制的にシャットダウンさせるといった方法で、特定の曜日の残業を完全にできないようにする体制を作ることも可能です。
ただし、ノー残業デーには、「それ以外の日は残業をしてもよい」と思われてしまうリスクもあります。「残業はしないのが普通」という意識づくりや体制づくりとは相反する施策になる可能性がありますので、注意しなければなりません。また、ノー残業デー前後に業務が集中する、どうしても当日中に仕上げなければならない仕事を強制的に終了させられて現場が苦労するといった問題が起こる可能性もあります。

3. 人事評価・報酬制度の見直し

労働時間の長さや残業の多さを評価する制度は、長時間残業を誘発します。早急に見直しを行い、残業を良しとしない風土につながる評価制度を作ることが重要です。
具体的な成果や目標達成度合いに応じた評価基準を定めれば、管理者による「あの人は残業が多いからがんばっている」といった主観や偏見が入り込みづらくなります。同時に、必要性の低い残業を繰り返す従業員には注意をするなど、残業の多さがプラス評価にはならないということを示すのも効果的です。

4. 残業削減の必要性を従業員に周知

残業の削減による生産性の向上や人件費の削減は、企業と従業員双方にとってのメリットであることを周知するのもお勧めです。
業務効率と生産性を高めれば、利益を増やして無理なく従業員に還元していくこともできるでしょう。従業員も、給料のベースアップやボーナスの増加があれば生活のための残業をしなくなり、定時に退社して充実したプライベートを過ごすことを期待できるようになります。
残業は良いものという風潮をなくし、一人ひとりが残業を減らしていこうという意識を持つことが重要です。

5. 勤怠管理システムによる打刻時間の管理

残業時間の正確な把握と管理のためには、勤怠管理システムの導入が有効な手段になります。勤怠管理システムとは、出退勤の時間を従業員がシステム上で打刻することで、勤務時間を正確に把握・管理するシステムです。

残業時間の上限規制に対応するためには、従業員一人ひとりの残業時間を正確に把握し、管理しなければなりません。また、人力での確認には多大な手間がかかり、集計ミスのおそれも高まります。
その点、勤怠データを基に残業時間を自動で計算し、残業時間の社内基準を超えそうな場合はアラートを出すといった機能が搭載されたシステムを活用すれば、効率的な残業管理ができます。残業の申請・承認機能がついたシステムもあるため、残業の事前申請制を導入したい場合、同時に勤怠管理システムを導入するのも効果的です。

6. ログ管理システムによるPCログオン・ログオフ時間の管理

勤怠管理システムでカバーできない残業管理の問題には、ログ管理システムの活用がお勧めです。勤怠管理システムの多くは、システム上の打刻操作によって出退勤時間を記録します。打刻は従業員が自分で行うため、不正打刻やサービス残業といった問題は回避できません。その点、パソコンのログインやログオフの時間を記録できるログ管理システムなら、社用パソコンの稼働時間を基に業務時間の実態を把握できます。

ただし、電話会議などでパソコンを使っていないが就業していたというケースや、パソコンにログインしたがすぐに雑談が始まって業務を開始していないというケースもあります。そのため、打刻時間とログを照らし合わせて、「打刻された勤務時間とパソコンの稼働時間が一致しない場合は理由を確認する」といった運用を行えば、管理の正確性を高められるでしょう。
ログ管理機能のついた勤怠管理システムや、勤怠管理システムとの連携が可能なログ管理システムの導入によって、正確な管理が可能になります。

ログ管理を活用した勤怠管理について詳しくは、下記の記事をご参照ください。

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ルール策定や勤怠管理システムなどで、適切な残業管理を行おう

無駄な残業や不正確な残業時間の記録につながりやすい制度の見直しをすることで、適切な残業管理ができます。まずは自社の実態を確認し、問題を洗い出してから、評価制度の見直しや適切な残業ルールを導入していくのがお勧めです。
そして、勤怠管理システムやログ管理システムを導入すれば、手間なく正確に残業時間を把握することもできるでしょう。

インターコムの「MaLion」シリーズには、OSのログオン監視機能が搭載されており、終業時間を超えて労働しようとする従業員に警告を表示することができます。また、様々な勤怠管理システムとの連携も可能で、たとえテレワーク中の従業員でも、勤怠管理システムの打刻データと「MaLion」で収集したパソコン稼働ログにより、正確に労働時間を管理することが可能です。
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