ブルートフォース攻撃とは? 類似した攻撃手法や被害事例、対策を解説
パスワードを破って不正アクセスをするサイバー攻撃の1つに、ブルートフォース攻撃があります。理論上考えられるパスワードの組み合わせをすべて試すという古典的な手法ですが、最近はコンピューター技術の進化によってパスワードの解読が容易になり、攻撃を仕掛けられる企業が増えてきました。では、ブルートフォース攻撃から情報資産を守るためには、どのように対策すればよいのでしょうか。
本記事では、ブルートフォース攻撃の意味や類似した攻撃手法、被害事例のほか、有効な対策などについて解説します。
ブルートフォース攻撃とは、すべてのパスワードのパターンを試して認証突破を試みる攻撃手法
ブルートフォース攻撃は、考えられるすべてのパスワードのパターンを試して、ログイン認証の突破を試みるサイバー攻撃の手法です。元々は暗号解読のために考案された手法で、「ブルートフォースアタック」「総当たり攻撃」「力任せ攻撃」などと呼ばれることもあります。
ログインIDが判明していれば、IDを固定して考えられるパスワードを一つひとつ試行すると、いずれは正しいパスワードを特定することが可能です。例えば、パスワードを設定する際のルールが「0から9までの数字を組み合わせた5桁の数列」であれば、10通りを5回掛けた10万通りの組み合わせを試せば正解にたどり着きます。アルファベットの大文字や小文字を組み合わせたパスワードを採用することで、考えられるパスワードのパターンは増やせますが、時間をかければ認証は突破できます。
パスワードの組み合わせをコンピューターに処理させれば短時間で認証が突破できるようになるため、コンピューターの処理速度の増加と共に、ブルートフォース攻撃の脅威も増してきました。また、正規のIDとパスワードで認証されているため、不正が発覚しにくい点も、ブルートフォース攻撃の特徴です。
ブルートフォース攻撃と類似した攻撃手法
ブルートフォース攻撃のほかにも、ログイン認証を突破するために行われる点が類似しているいくつかの攻撃手法があります。代表的な手法としては、辞書攻撃、パスワードリスト攻撃、リバースブルートフォース攻撃の3つが挙げられます。
辞書攻撃
辞書攻撃とは、企業や個人が使う頻度が高い単語やフレーズを「辞書リスト」に登録し、文字列を組み合わせてログインを試行する攻撃手法です。例えば、「apple」「password」「1234」など、一般的な単語やパスワードによく使われる文字列の組み合わせを順番に入力することで、認証の突破を試みます。
パスワードリスト攻撃
パスワードリスト攻撃とは、不正に入手したパスワードリストを順番に入力して、ログインを試みる手法です。特定のサービスがサイバー攻撃を受け、パスワードが流出した場合に、ほかのサービスでも流出したパスワードが使い回されていると、侵入を許すことになります。
リバースブルートフォース攻撃
リバースブルートフォース攻撃とは、IDを固定してパスワードを変えるブルートフォース攻撃に対して、パスワードを固定してIDを総当たりする攻撃手法です。ブルートフォース攻撃と同じように、自動化ツールを使えば何通りものログインを自動で試行でき、突破までの時間も短くなります。
パスワードを数回間違えるとロックされる機能が付いた認証システムでも、IDを変えるリバースブルートフォース攻撃を防ぐことはできないため、ブルートフォース攻撃よりも危険な手法になりかねません。
ブルートフォース攻撃を受けた場合の被害
ブルートフォース攻撃を受けると、企業に重大な損害が発生する恐れがあります。ブルートフォース攻撃から情報を守る意識を高めるため、下記のような被害のリスクがあることを知っておきましょう。
情報漏洩
ブルートフォース攻撃を受けた場合に発生する被害の1つとして挙げられるのは、情報漏洩です。不正ログインされたシステムやサービスに個人情報や機密情報を保存していれば、盗み出されて悪用される可能性が高まります。企業が保有していた個人情報や機密情報が漏れると、顧客や社外関係者からの信用を失うリスクもあります。
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システムの乗っ取り
ブルートフォース攻撃により、システムが乗っ取られる被害が発生する可能性もあります。乗っ取ったパソコンを経由して、全社のパソコンにデータを暗号化するランサムウェアが送り込まれ、データの復旧と引き換えに身代金を要求される攻撃に発展するリスクも考えられます。
また、管理システムが乗っ取られた場合は、Webサイトを改ざんされ、詐欺行為に利用される可能性もあるため注意しなければなりません。SNSが乗っ取られた場合も、担当者と偽った投稿によって詐欺被害などが発生する可能性があります。
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クレジットカードの不正利用や預金の不正送金
ブルートフォース攻撃によって不正にログインされた場合、クレジットカードの不正利用や預金の不正送金の被害に遭うことも考えられます。
例えば、攻撃を受けたシステムやサービスのアカウントにクレジットカード情報が保存されていた場合、情報を悪用されて不正利用の被害に遭う可能性があります。また、オンラインバンキングの不正ログインを許した場合、不正操作によって攻撃者への送金が行われ、金銭的な被害が発生しかねません。
ほかの不正アクセスの誘発
ブルートフォース攻撃によって不正アクセスされたID・パスワードをほかのシステムやサービスでも使っていると、そのシステム・サービスに被害が拡大するリスクがあります。パスワードの使い回しによって、複数のシステム・サービスで不正ログインを許したケースは少なくありません。被害の拡大を防ぐには、パスワードの使い回しを避けることが重要です。
ブルートフォース攻撃に関する被害事例
大手企業などで、ブルートフォース攻撃の被害が発生した事例があります。下記の2つのケースは、ブルートフォース攻撃による被害の代表例です。
立大学機構で発生した情報漏洩
国立大学機構の情報システムのアカウントを管理するサーバーがランサムウェアに感染した事例では、攻撃の端緒にブルートフォース攻撃が行われました。
職員から、情報システムのアカウントのパスワードが変更できない旨の問い合わせがあり、サーバーのログを確認したところ、不正アクセスが判明しました。サーバーのログには、総当たりでパスワードのログインが試行された形跡があり、ランサムウェアに感染させるためにブルートフォース攻撃が行われたことが判明しています。この不正アクセスにより、個人情報が約4万件漏洩した可能性があります。
大手コンビニエンスストアの決済サービスで発生した不正利用
企業がブルートフォース攻撃を受けた事例ではありませんが、大手コンビニエンスストアチェーンが提供する決済サービスで、適切な対策がなされていなかったために顧客にブルートフォース攻撃の被害が発生したと考えられる事例もあります。
決済サービスの利用者本人になりすましてアカウントにアクセスした第三者が、登録されていたクレジットカードやデビットカードを使ってアカウントにチャージし、店舗で商品を不正購入する被害が発生しました。不正利用の背景として、そのサービスではIDとパスワードのみで会員登録・ログインが可能だったことが挙げられます。ID・パスワード以外の方法でも認証を行う2段階認証が行われていなかったため、ブルートフォース攻撃による不正アクセスが容易に行える状況でした。
この事例では、不正利用の被害は約900名、被害総額は約5,500万円に上っています。
ブルートフォース攻撃への対策
情報資産を確実に保護し、自社の信頼を維持するために、適切な対策でブルートフォース攻撃に備えましょう。主な対策としては、下記の3つの方法が考えられます。
パスワードの桁数を増やし複雑にする
ブルートフォース攻撃はパスワードを総当たりする手法であるため、できるだけ長く、複雑なパスワードを設定することで被害を防ぐことが可能です。
例えば、数字4桁のみのパスワードの組み合わせは1万通りですが、6桁になれば100万通りになるため、試行回数が増え、認証の突破にかかる時間を増やせます。数字だけでなくアルファベットの大文字・小文字、記号などを組み合わせれば、必要な試行回数は膨大になり、すべてのパターンを試すことが現実的には難しくなるため、ブルートフォース攻撃の防止につながります。
多要素認証を導入する
多要素認証を導入していれば、ブルートフォース攻撃によってID・パスワードが破られても、不正にログインされることはありません。
多要素認証とは、ID・パスワードのような知識情報以外に指紋・顔認証などの生体情報、携帯電話の所持情報などを組み合わせて本人を認証する方法です。例えば、ID・パスワードでの認証に加えて、携帯電話のSMSにワンタイムパスワードを送るように設定することで、携帯電話を所持している人だけが認証できるようになります。ID・パスワードによるログインがSMSなどで通知されると不正ログインの検知にもつながるため、パスワードの変更にも迅速に対応することが可能です。
アクセスできるIPアドレスを制限する
ブルートフォース攻撃の対策として、情報にアクセスできるIPアドレスを制限する方法も有効です。IPアドレスは、ネットワークに接続している機器に割り振られる番号で、いわゆるインターネット上の住所です。
社内ネットワークを構築する際には、社内のIPアドレスのみアクセスできるようにすることで、仮にID・パスワードによる認証がブルートフォース攻撃で突破できる状況でも、不正アクセスを未然に防ぐことができます。
適切な対策を導入し、ブルートフォース攻撃を防ごう
ブルートフォース攻撃は、ログインできる可能性があるパスワードを総当たりで試す攻撃手法です。ブルートフォース攻撃によって不正アクセスを許すと、情報漏洩やデータの改ざん、登録されているクレジットカードの不正利用など、深刻な被害が拡大するリスクが高まります。
自社の情報資産を守るためには、ブルートフォース攻撃を想定して、できるだけ早く適切な対策を講じましょう。複雑なパスワードの設定や、多要素認証の導入、IPアドレスの制限といった方法を検討するのがお勧めです。
併せて、情報漏洩対策ツールを導入すると、万が一ブルートフォース攻撃などで情報漏洩のリスクが発生した場合でも、被害を防ぐことができます。インターコムが提供する「MaLion」シリーズなら、ブルートフォース攻撃による不正アクセスがあった場合も、Webアップロード監視機能、ファイルアクセス監視・制限機能などでデータの流出に対応できるため、企業の情報資産を保護することが可能です。情報漏洩対策をお考えの場合は、ぜひご検討ください。