ライセンス違反とは? 罰則などのリスクと防止策のポイントを解説
ソフトウェアのライセンス違反は、法的制裁のリスクを伴う行為です。ライセンス契約を破ることにより、民事訴訟、場合によっては刑事訴訟につながる可能性があります。法的トラブルを回避し、企業のビジネスを保護するためには、ライセンスを正しく管理し、適切にソフトウェアを使用する必要があります。
本記事では、ライセンス違反となる行為の例や、著作権法違反の罰則・賠償金などのリスクを明らかにし、ライセンス違反を防ぐためのポイントを解説します。
ライセンス違反とは契約の範囲を超えてソフトウェアを使用すること
ライセンス違反(ソフトウェアのライセンス違反)とは、特定のソフトウェアを、提供元が定めた条件や規約の範囲を超えて使用することを指します。
ライセンスとは、使用許諾条件(契約)のことです。有料・有償のソフトウェアを購入するというのは、ハードウェアを購入する場合とは異なり、ソフトウェアを使用する権利を購入することを意味します。つまり、「提供元が指定した条件の下で使用することができる権利=ライセンス」を購入しているということです。
例えば、多くの有料・有償のソフトウェアは、使用許諾契約書にインストール可能なパソコンの台数を明示しています。そのソフトウェアをインストール可能な台数を超えてインストールした場合、ライセンス違反となります。
同様に、ソフトウェアを不正コピー(違法コピー)してインストールまたは使用する行為もライセンス違反です。あるいは、コピーしたソフトウェアをインターネットオークションなどで販売または購入する行為、ファイル共有ソフトなどで配信または利用する行為も、使用許諾条件(契約)により禁止されているのが一般的です。総じて、有料・有償のソフトウェアを「ライセンスを購入・課金することなく使用する」と、そのほとんどがライセンス違反行為に該当します。
もし、ある企業がソフトウェアをライセンス違反である状態のまま使用しているとすれば、その企業はコンプライアンスに関する重大な問題を抱えていることになるのです。
ライセンス違反のリスク
ライセンス違反は、企業にとって大きなリスクです。放置してしまうと企業に甚大なダメージをもたらす可能性があります。具体的にどのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
著作権法の法律違反
そもそもソフトウェアは、「プログラムの著作物」として著作権の保護対象となります。ソフトウェアの著作権は著作権者(著作権を有する人)にあり、ソフトウェアを購入したとしても、その著作権が購入者に移るわけではありません。著作権者からソフトウェアを使用する許諾が得られるだけです。その許諾がライセンスであり、ライセンスは一般的に各国の著作権法に基づいて定められています。
ですから、ソフトウェアを不正にコピーするなどライセンス違反をした場合、著作権の侵害が問われることになります。第三者が著作権を有する著作物を複製するには、当該著作権者から許諾を得る必要があるためです。
著作権侵害の刑事罰は、代表者や従業員などの個人に対しては10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。さらに、企業などの法人による侵害(黙認や放置)の場合は、3億円以下の罰金が科されます。
ソフトウェアの使用差止めや民事訴訟
ソフトウェアのライセンス契約(使用許諾契約)には、提供元であるベンダーによる監査権が定められていることがあります。監査権とは、ベンダーが契約の遵守状況を確認するための権利です。監査により契約が守られていないことが発覚すれば、使用差止めや高額な損害賠償を求められる可能性があります。
過去の民事訴訟では、ビジネスソフトを不正コピーして著作権を侵害したとして、約8,500万円の損害賠償を言い渡された事例(東京地方裁判所、2001年5月判決)がありました。
また、和解による損害賠償事例も増えており、数千万円~1億円以上の損害賠償額・和解額となることも珍しくありません。過去には約4億4,000万円が支払われたケースも報告されています。
このように、不正コピーなどのライセンス違反の代償は、ソフトウェアを正規に購入する場合よりもはるかに大きなものです。最終的に企業は、経営を圧迫するような大きな財務的負担を強いられます。
社会的信用を失う
ライセンス違反の事実が明るみに出れば、顧客や取引先の信頼を失い、社会的信用の失墜につながる恐れがあります。企業としてコンプライアンス意識の低さを露呈することとなり、ビジネス継続への影響も免れないでしょう。
「企業倫理に問題あり」という評価は、多額の損害賠償金を支払う以上に大きなダメージともいえます。
違法なソフトウェアからウイルス感染する危険性
インターネットオークションやファイル共有ソフトを通じて入手した海賊版ソフトウェアのほか、不正コピー・改ざんされたソフトウェアには、ウイルス感染の仕組みが組み込まれている可能性があることに注意が必要です。
そうしたソフトウェアをインストールすると、パソコンを乗っ取られて情報を盗まれたり、ほかのシステムへの攻撃の踏み台に利用されたりする危険性があります。ウイルスに感染し、情報の悪用や社内外への感染拡大などが起きれば、企業はさらに大きな損害を受けることになってしまうのです。
ライセンス違反が起こる理由
ライセンス違反は、なぜ起こるのでしょうか。その理由は様々ですが、多くの場合、下記2つの問題が関係していると考えられます。
従業員のITリテラシー不足
ライセンス違反が起こる理由としてまず挙げられるのが、現場の従業員のITリテラシーや知識の不足。従業員がライセンスの仕組みやライセンス違反の代償について十分に理解していないと、良くない行為をしているという感覚を持ちづらく、危機意識も薄くなりがちです。社内で不正コピーされたソフトウェアの使用が慣習化していれば、なおさら感覚が麻痺してしまいます。そのため、従業員が自覚のないままにライセンス違反をしているケースも少なくありません。
一方で、ライセンス違反はその多くが内部告発により発覚しています。上司から不正コピーされたソフトウェアのインストールを指示されたものの、従業員がその状況に疑問を持つケースなどです。
不正コピーはソフトウェアをインストールさせた人(教唆)も、実際にインストールした人(行為者)も処罰の対象になります。指示通りにインストールすれば共犯者になるということも知っておくべきでしょう。
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ライセンス管理の複雑化
ライセンス違反の原因として大きな問題となっているのが、ライセンス管理の複雑化です。現在ではクラウドサービスが普及し、モバイルアプリの需要も高まり、オープンソースソフトウェアを使用する企業も増えています。従来の購入型の「永続ライセンス」に加えて、「サブスクリプション契約」や、複数デバイスで利用可能な「セカンドライセンス」、まとめて購入することで割引される「ボリュームライセンス」のほか、「プリインストール」「アップグレード版」など、契約形態や契約内容は多様化する一方です。
そのため、多種多様なソフトウェアを使用している企業ほど、各種ライセンス条件が混在し、ライセンス管理が煩雑・困難になるという課題を抱えているといえるでしょう。
手作業でライセンスを管理すると間違いが起こりやすく、スキルやリソースも必要です。結果、意図しないライセンス違反が起きやすいという状況が生まれています。
ライセンス違反を防ぐには?
ライセンス違反を防ぐには、どのような対策が必要なのでしょうか。ここからは、対策する上で必要となる4つのポイントを解説します。
ライセンスを一元管理する
まず重要なのは、ソフトウェアのライセンスをシステム管理部門や法務部門が一元管理するということです。ライセンス管理に特化したチームを設置するのも有効です。従業員や各部門・部署といった現場に、ライセンス購入の権限をバラバラに付与しない体制を整えましょう。
システム管理部門や法務部門が一元管理する場合、企業で使用するソフトウェアのライセンスの購入、更新、割り当てのほか、インストールやアクティベーション管理などの業務をすべて同部門で行います。そうすることにより、社内で使用しているソフトウェアのライセンスの状況を可視化して把握し、ライセンス違反を防ぎ、コンプライアンスを維持することができます。また、ソフトウェアの重複購入を防いで無駄を省くことも可能です。
ライセンス違反のリスクを周知する
従業員を対象とした研修の実施やマニュアルの整備など、ライセンス違反のリスクについて周知を徹底することは、従業員の判断によるライセンス違反を防止するために重要です。
ソフトウェアのライセンスの仕組みや著作権に関する正しい知識と理解が共有されれば、組織内に自浄作用が生まれることも期待できます。企業倫理や透明性が強化され、より良い企業文化の構築・熟成にも結び付くでしょう。
必要なソフトウェアを揃えておく
ライセンス違反防止のための大前提として、ビジネスに必要なソフトウェアやツールを適切に揃えておくこともポイントです。
不正コピーや海賊版の利用は、「必要なのにない」という状況がもたらすものともいえます。正規のソフトウェア購入にはコストがかかるとはいえ、ライセンス違反が発覚した場合の損害賠償などの額のほうがはるかに高くつくことは明白です。
現場レベルで新しいソフトウェアを使いたいという要望が生じたとき、そのソフトウェアが必要かどうかを迅速に判断し、ライセンスを適切な数で確保できる体制があれば、ライセンス違反のような問題が生じる可能性は低くなります。
IT資産管理ツールを導入する
ライセンス違反を防ぐための最も有効かつ効率的な方法は、IT資産管理ツールの導入です。IT資産管理ツールは、ソフトウェアとライセンスが適切に利用されているかどうかを把握・管理するためのソフトウェアです。
IT資産管理ツールを利用すれば、複雑化したライセンスの一元管理が容易になり、各端末においてライセンス違反が起きていないかを監視することもできます。ツールでライセンスを管理しているという事実により、従業員のコンプライアンス意識も高くなるでしょう。
IT資産管理ツールの導入は、ほかにも複数のメリットをもたらします。例えば、必要以上のライセンスを保有していないかをチェックし、不要なライセンスを特定してそれらを削減または再配分することで、コスト削減を実現することです。
また、ライセンス管理に最低限必要な情報を自動収集して管理台帳を作成することで、人的ミスを軽減できます。ベンダーからのライセンス監査を受けた際にソフトウェアの使用状況に関する記録を出力して、簡単に監査の準備をすることも可能です。
ライセンス違反は管理ツールを使って防ごう
ソフトウェアのライセンス違反は、民事訴訟、刑事訴訟により、罰則を受けるリスクのある行為です。開発者または販売者から訴えられて賠償金を支払うか、重大かつ意図的なライセンス違反の場合、著作権法違反による罰金や懲役刑の刑罰が科される可能性があります。
ライセンス違反を防ぐために推奨されるのが、IT資産管理ツールの導入です。その1つであるインターコムの「MaLion」シリーズは、ルールに反した従業員の行為を発見すると、管理者に通知する機能があります。また、USBメモリなどの外部記憶デバイスを登録して、使用可能・使用禁止・読み取り専用といった設定をして制御できる機能も不正コピーの防止などに役立ちます。
ソフトウェアの管理が複雑化してライセンス違反の心配がある場合には、ぜひ「MaLion」シリーズの導入をご検討ください。