PCログによる勤怠管理とは? メリットや注意点、ログの収集方法を解説
労働基準法を遵守するためには、残業時間を含む勤怠管理を厳密に行うことが必要です。一方で、テレワークの増加などによって、従来通りのやり方では正確な勤怠管理ができないケースも出てきています。
そこで本記事では、PCログを活用した勤怠管理の方法やメリット、注意点などについて解説します。PCログを使った勤怠管理は、厚生労働省も認めている正確性の高い方法です。勤怠管理に課題を感じている担当者の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
適切な勤怠管理の重要性
勤怠管理とは、従業員の出退勤時間や労働時間、休憩時間、休日などを管理することです。従業員の給与は日々の勤怠記録に基づいて支給される場合が多く、適切な勤怠管理が行われていないと正しい給与計算もできません。
また、勤怠管理は労働基準法に違反しないためにも重要です。労働基準法には1日・1週間・1か月の労働時間や、残業に関する規定などが設けられています。例えば、1日の労働時間は8時間です。原則として1日8時間を超える業務をさせることはできません。36(サブロク)協定を締結することで従業員に残業をさせることが可能になりますが、それでも原則月45時間以内の残業という制限があります。
正確な勤怠管理が行われていないと、残業をしたかどうかも、1か月の残業が何時間だったのかもわかりません。このような状態では、労働基準法に違反している事態が発生していても、それに気付くことすらできないのです。突然、従業員から未払い残業代を請求される可能性などもあるため、日頃からの正確な管理が重要です。
従来の勤怠管理は、多くの会社ではタイムカードを使って行われていました。しかし、打刻してから残業を強いる、同僚に代理で打刻を頼むなど、適切な運用が行われないこともあります。このような問題を排除するためには、改ざんのおそれが少なく、正確性の高い勤怠管理方法を採用する必要があります。
PCログは勤怠管理に活用できる
日常的にパソコンを使用する業務を行っている従業員の勤怠管理には、PCログの活用が便利です。PCログを利用することで、実状に即した正確性の高い勤怠管理が可能になります。PCログによる勤怠管理の概要と有用性について、下記で確認していきます。
PCログとはパソコンを使用した履歴
PCログとは、パソコンを使用した履歴のことです。パソコンがいつ起動し、どのような操作が行われ、いつシャットダウンされたかといった履歴が記録されています。
通常、パソコンで業務を行っている従業員は、出社してすぐにパソコンを起動し、退社時にシャットダウンします。そのため、パソコンの起動・シャットダウンログを確認すれば、正確な業務時間が推測できるのです。
これは、テレワーク中の従業員でも同様です。企業が貸与したパソコンの起動時刻とシャットダウン時刻を確認すれば、労働時間を把握できます。また、起動されているだけで操作されていないといったような状況をチェックすることも可能です。
PCログによる勤怠管理が重要になってきている
厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」において、労働時間を適正に把握するための方法として、「パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」を挙げています。また、元従業員が未払い残業代の支払いを求めた裁判の中には、PCログを使った残業時間の算定が認められたケースもあります。
PCログを活用した勤怠管理は、十分根拠のある適正な方法だといえるでしょう。ただし、PCログも万能ではないため、通常の勤怠管理システムとの併用がお勧めです。
PCログを勤怠管理に活用するメリット
PCログは自動的に記録されるものなので、勤怠管理に活用すれば、タイムカードなどの自己申告だけに頼らない管理ができるようになります。例えば、下記の2つの場面でより正確な勤怠管理を行うことが可能になります。
自己申告以外の方法で労働時間が把握できる
PCログを使った勤怠管理は、パソコンのログという客観的な記録に基づいた管理方法です。自己申告のように事実かどうかを確認できない方法ではないため、正確性の高い管理ができます。
タイムカードも客観性のある労働時間の管理方法とされていますが、誰がタイムカードを打刻したのかを後から確認することはできません。また、タイムカードを打刻した後で隠れて残業を行っていても、労務担当者からはわかりません。その点、PCログはパソコンで業務を行っていれば必ず発生するものであるため、より正確な管理をしやすくなります。
さらに、出社しなくても記録・確認できるというのもPCログのメリットです。事務所でタイムカードを打刻するためには出社する必要がありますが、PCログは働く場所を問わずパソコンに記録されます。
打刻忘れや虚偽の打刻修正申告にも対応できる
PCログは、タイムカードなどを使った勤怠の申告が正しいかどうかを確認する際にも便利です。
タイムカードの打刻漏れがあっても、PCログを確認すれば、何時から働いていて、何時にパソコンの電源を落としたのかが推測できるでしょう。
また、打刻失念などの理由で出退勤時間の修正申請を受けた際も、申請内容が事実かどうかをPCログから確認できます。
PCログを勤怠管理に活用する際の注意点
PCログの活用は優れた勤怠管理の方法ですが、万能ではありません。あくまで、パソコンに記録された情報でしかないため、下記の2点には注意が必要です。
PCログだけで正確に労働時間を把握できるわけではない
PCログを基に残業時間が認定された裁判例はありますが、通常の業務中の勤怠管理をPCログだけに頼って行うのはお勧めできません。なぜなら、すべての業務をパソコンで行うとは限らないためです。
例えば、「始業時刻に合わせて出社後、すぐにミーティングがあったためパソコンを起動しないまま打ち合わせに入った」ということもありえます。また、「パソコンをシャットダウンした後で急な来客対応をした」「パソコンをつけっぱなしで雑談をしていてシャットダウンが遅くなった」など、様々な原因によって、実際の労働時間とパソコンの稼働時間が一致しないことがあるのです。
このような場合、PCログだけを頼りに勤怠管理をしていると、正確な勤怠時間の把握ができません。タイムカードや出退勤時間を打刻する勤怠管理システムなど、PCログ以外の方法も併用することをお勧めします。
ログの収集に手間がかかる
PCログはパソコンに自動で記録されるものですが、それぞれのパソコンから個別にログを収集するのは非常に手間がかかります。一定数以上の従業員がいる企業でPCログを勤怠管理に活用したいのであれば、ログを自動で取得できるツールを活用するといいでしょう。
ただし、ツールの利用には一定のコストがかかります。また、業務フローが変わることになるため、導入時には一時的に担当者の負担が増える可能性もあります。なるべく負担を抑えるためには、勤怠管理システムと連携のとれるツールの活用がお勧めです。
PCログを収集する方法
PCログは、手動で収集することも、システムを利用して自動的に収集することもできます。勤怠管理に利用できるログの取得方法としては、下記の3点が挙げられます。勤怠管理を行う従業員の人数や、現在の勤怠管理方法などに応じて選択してください。
パソコンから手動で収集
パソコンには、起動・シャットダウンを含む様々な操作ログが記録されています。Windows 10や11のパソコンであれば、Windowsマークを右クリックして「イベント ビューアー」を選択、「Windows ログ」を選ぶことで、操作履歴を確認できます。
しかし、1台ずつ従業員のパソコンを立ち上げてログを確認するのは非常に手間です。毎日の稼働状況を手動で確認するのは、確認対象が複数台ある場合ほぼ不可能でしょう。また、知識のある従業員であればPCログを改ざんすることも可能です。
「タイムカードの打刻修正申請について、虚偽が疑われる場合のイレギュラー対応」などに使うことはできますが、通常時の勤怠管理にはあまり適していません。
ログ管理システムで収集
ログ管理システムとは、パソコンやシステムに保存されたログを自動で収集・保存・監視するシステムです。分析レポートの出力や、不審な挙動があった場合のアラート機能なども搭載されています。
ログ管理システムでは、PCログ・アクセスログ・ファイルログ・印刷ログなど、様々なログの中から、管理に必要な範囲のログを収集できます。PCの稼働時間だけでなく、業務に必要なシステムへのアクセスログの確認なども可能で、より詳細な管理ができるでしょう。
勤怠管理に特化した勤怠管理システムと併用することで、勤怠管理システム上の打刻時間とパソコンの稼働時間のログを比較すれば、より正確な勤怠時間の把握が可能になります。ログ管理システムの中には、ほかの勤怠管理システムと連携し、この比較・分析を自動的に行ってくれる機能を備えているものもあります。
ログ管理システムについて詳しくは、下記の記事をご参照ください。
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勤怠管理システムで収集
勤怠管理システムの中には、PCログを取得できる機能が搭載されているものもあります。勤怠管理システムとは、従業員の労働時間を管理するためのシステムです。残業時間が一定の基準を超えた従業員に対してアラートを出したり、労働時間や遅刻・早退時間、残業時間などを自動で集計したりする機能が搭載されています。そのほか、休暇管理機能やシフト管理機能、工数管理機能、給与計算ソフトとの連携など、勤怠管理システムの機能は様々です。
PCログの取得も、このような多様な機能の1つとして搭載している勤怠管理システムがありますが、それほど多くはありません。
勤怠管理システムをすでに利用しているものの、そのシステムがPCログ収集に対応していない場合、新たに対応できる勤怠管理システムに乗り換えるか、ログ管理システムと勤怠管理システムを併用することになるでしょう。
現状の勤怠管理システムに問題がないのであれば、乗り換えではなく、ログ管理システムを導入して連携するのがお勧めです。PCログは勤怠管理以外にも様々な用途で活用できるため、ログ管理システムを導入することは企業に大きなメリットをもたらします。現在利用している勤怠管理システムとの連携可否や操作性などを確認して、最適なシステムを選定してください。
システムをうまく使ってPCログを勤怠管理に活用しよう
テレワークやフレックスタイム制といった柔軟な働き方が推進されている中、年5日の有給休暇取得義務が導入されるなど労働時間に関する法令も厳しくなっており、勤怠管理の正確性は今後ますます重要になっていくと考えられます。従業員が確実に仕事を離れ、適切な休息を取っているかどうかを確認するためには、PCログの確認が確実です。
労務管理に必要な正確な情報は、ログの確認もできる勤怠管理システムか、ログ管理システムと勤怠管理システムの併用により一目でわかります。勤怠管理のシステム化を進め、管理業務の効率化と従業員が働きやすいホワイトな職場づくりを目指しましょう。
インターコムの「MaLion」シリーズは、OSのログオン監視により終業時間を超えて労働しようとする従業員に警告を表示することができ、労務管理にも役立ちます。また、様々な勤怠管理システムとの連携も可能で、たとえテレワーク中の従業員でも、勤怠管理システムの打刻データと「MaLion」で収集したパソコン稼働ログにより、正確に労働時間を管理することが可能です。
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