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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第4回 クラウドは、
「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」 2014年2月19日配信

最近、多くのソフト会社がこぞってその業態を受託開発やパッケージビジネスからクラウドサービスにシフトし始めている。

このクラウドビジネスが、今、私は「再び」気になり始めている。
なぜ「再び」かというと、当社は10数年前にあるソフトのクラウドサービスをやり、色々な苦労を乗り越えてきた経験があるからだ。今回のコラムは、自分の経験を通してクラウドを応援する独り言を話す。

クラウドはソフトを自社保有するオンプレミスと違って、ユーザーはソフトを期間借りでき、止めたいときにいつでも止めることができる。サーバーを保有する必要もないし、社内にハードやソフト専任の管理者を置く必要もない。ソフト開発や購入のためにかかる費用も不要だ。本来ユーザーが目的とする、ソフトウェアを利用することだけに専念できる強い味方だ。

一方サービスを提供する側のソフト会社は、ソフトを期間貸しすることで、毎月の売上がゼロスタートになることから解放され、ストックにより企業基盤が安定する。企業基盤が強くなれば、高い税金も払えると言うわけだ!

まさにクラウドは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」で近江商人の「三方よし」の心得がそのまま当てはまる。

しかし、そううまい話だけでもない。
売り手、買い手の双方にメリットがあるように見えるこのクラウドにも一筋縄に行かない問題が見え隠れする。特に企業体力が弱いソフト会社には参入障壁が高いことが難問だ。

当社もクラウドを始めてわかったことであるが、サービス開始当時は様々なトラブルに見舞われた。まず、設備やソフト開発での初期投資が予想以上にかかったことだ。データセンターの借り入れ、ライセンスの管理、情報漏洩防止のためのセキュリティ対策、これらシステムの運用管理や常時監視などなど。また、クラウドは一度でもシステムダウンを起こすと社会的な信用を失う危険性もはらんでいる。

次に、販売面で苦慮した。パッケージソフトに比べて1クライアントあたりの単価があまりにも安いことから、発売当初は大物食いの営業マンが積極的に売りたがらなかったことである。これは販社やパートナーさんも同じだ。

それでもクラウドはうまくやれば成功する可能性は十分ある。少なくとも、受託や派遣でビジネスを進めていくより遥かに成功する確率が高いと思える。

体力の弱い会社やこれまでに受託やパッケージでの経験しか持っていないソフト会社では、なかなかクラウドビジネスに舵を取るのは決断しにくい。しかし、いつまでも状況が変わらない旧態依然の仕事をしていたのでは将来への「ロマン」が描けない。

結局のところ、国内のソフト会社の実態は大手の元請け企業だけが儲けることができ、下請けの企業はなかなか浮き上がれないピラミッド構造であることは皆さんご存知の通りであろう。パッケージビジネスも以前ほど儲からない状況になってきた。これを打破するための手段として、クラウドビジネスはピッタリの手段だと思える。

当社のクラウドの始まりは、10年程前に始めた個人向けソフト(1ライセンス月額課金100円前後)のASPサービスである。当時ASPでソフトを提供している会社はほとんどなかったと思うが、このビジネスを思い付くきっかけとなったのは、携帯電話の着メロを提供している企業を訪問したとき、これと同じビジネスモデルをパソコン向けにできないものかというアイデアがひらめいたことである。

パソコン向けのソフトでも、極端に言えばお客様が毎月お金を払っていることを忘れてしまうくらいの安価で、しかも携帯電話の着メロ並にたくさん集客できれば、掛け算ビジネスが成り立つ。寝ていても、お風呂に入っていても、テレビを見ていても「チャリン、チャリン」と自動的にお金が落ちる仕掛けが想像できるのではないかと。

そう思いを巡らしているとき、たまたまタイミングよく知人を通じて海外のアンチウィルスメーカーを紹介してもらい、そのパッケージソフトをASPの形態で提供することを決めたのである。契約時に総代理販売の権利として数千万円の巨額なイニシャルペイメントを要求されたが、そこは持ち前の熱意と強力な接待攻勢で信頼を勝ち取り初期費用はチャラにしてもらった。

このASPサービスは最初の3~4年間は鳴かず飛ばずの状態が続き、経費だけが飛んでいく毎日だった。この状況があと1年続いたらもう諦めようかと考え始めたころから、徐々にユーザーが増え始め、最終的にはなんと1か月のトータルユーザー数が70万人を超えるまで成長したのだ。このビジネスが当社の売上の大きな柱となったのは言うまでもない。ASPサービス(現在のクラウドサービス)は、アイデアと我慢次第で儲かるのである。

そして現在、我々のソフト業界も大きく様変わりした。以前よりも商品規模が大きくなり、開発コストが数段かかるのに、販売単価は逆に安くなっている。コンシューマー向けや企業向けのパッケージにおいても、競業企業間の激しい値引き合戦で販売価格が値崩れし、異常に安くなってしまった。単純に売るだけでは、どんなにソフトを作っても儲からない状況だ。キラーソフトの誕生もなかなか望めない。

加えて日本のユーザーは価格の高い安いにかかわらず高品質を求める。これに応えるためには、高品質で高機能な商品開発と引き換えに確実に利益が上げられる戦略がどうしても不可欠だ。

今やソフトビジネスの将来を見据えて生き延びるには、たとえ薄利であっても多くのお客様へ商品やサービスを安定的に使っていただける仕組みを生み出すしかない。一旦ユーザーが付けば、小さなソフト会社でも十分に「そろばん」をはじくことができる。従来の受託やパッケージビジネスであれば、結局またどこかで他の方向を考えなくてはならないときがやってくる。我々はこれからも生き残りをかけて進まなくてはならないのだから、やるなら可能性がある「ロマン」を選択すべきだ。

ソフト会社の皆さん、「クラウド」を一緒に頑張りましょう。

株式会社インターコム
代表取締役社長 高橋 啓介


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