【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第11回 スタンドバイミー、友は一生の宝 2014年9月17日配信

会社を創業してから4年目の1985年、韓国の三宝コンピュータ(英語名:TriGem)から一人の役員が当社を訪れた。当時、三宝は有力なPCメーカーとして注目された韓国ITベンチャーの走りだった。例えがいいかわからないが、日本で椎名堯慶さんが立ち上げたソードのようなPCメーカーであったと思う。1999年にiMacに似たデザインのディスプレイ一体型PCを日本のSOTEC社へOEM供給し、日本市場で一大ブームを巻起こしたのは有名な話である。

この三宝から、当社が商品化したメインフレーム向けの端末エミュレーターソフト(FALCON)を韓国市場で再販したいとの話で役員が訪れたのである。この頃は韓国でもIBMや富士通のメインフレームが使われていた。創業間もない当社にとってこの上なく魅力的な話だった。さらに詳細を聞くため、急遽、私と常務の2人で韓国へ行くことになった。

ところが訪韓の直前になって、旅行代理店から常務のビザだけがどうしても下りないと連絡があった。理由を聞くと、常務と同姓同名の赤軍派メンバーが登録されていて入管がビザを発給してくれないとの冗談のような本当の話だった。結局、常務の訪韓が認められず、私一人で韓国へ行く羽目になった。

ここで心配になったのが言葉の問題だ。常務が多少英語を喋れたので安心しきっていたのだ。言葉の問題だけで予定をキャンセルする訳にはいかない。仕方なく意を決して初めて韓国の地へ乗り込んだのである。「なんとかなるさ」と強く自分に言い聞かせながら……。

三宝のオフィスでは、5~6名の役員幹部にズラーッと囲まれてミーティング。知っている限りのボキャブラリーを駆使して中学生以下のレベルで英会話。話がどのくらい通じたかはわからないが、誠意だけは理解していただいたと思っている。このときばかりは、プレッシャーで2時間ほど汗がしたたり落ちていたのを今でもハッキリ憶えている。

最終的に、向こうの副社長からの提案で「本日我々は結婚した。これから手を組んで一緒にビジネスをやって行こう」といった趣旨の韓国風アレンジの合意書と握手を交わし、詳細は後日詰めるということで事無きを得た。その際に、当社の商品を扱ってくれる三宝の子会社であるA.I Soft Korea社と社長のスク(Suk)さんを紹介してもらった。今後、このA.I Soft Korea社を窓口にして韓国内の有力企業へ当社のソフトを売り込んでいくということだった。

三宝とのミーティングを終え参加メンバー全員で昼食に出かけた。ここで私の隣にスク社長が座り、私の“たどたどしい”英語で食事を共にした。スク社長は何年か渡米経験があるので英語はネイティブに近かった。彼は私のレベルを察して、ゆっくりと誰でもわかる簡単なボキャブラリーで接してくれた。

と、突然、彼が目の前の焼き魚を食べながらそのままその箸で、私の皿にも運んでくれるではないか。私は、心の中で「えーっえーっ!!」と思わず叫んでしまった。日本では家族や恋人にしかできないマナーでも、こちらでは普通なことなのかも知れない。と思いつつ、和やかに作り笑顔をして「サンキュ―」と言いながら箸を突っついた記憶が残っている。

後で、この話をスク社長にしたところ、大笑いして韓国では親しい友には普通の行為、ということだった。郷に入れば郷に従えということだろうか。

3日間ほどの滞在を終え帰国する直前に、スク社長からソフトの動作確認と品質検査のため、三宝製のPCとディスプレイを直接東京に持っていってほしいと頼まれ、空港で70センチ角の2つの大きな荷物を渡された。動作確認用のPCなのでありがたくお預かりしたが、金浦空港のカウンターで異様と思えるほどの検査を受けて閉口した。なぜ、こんなに細かくチェックするのか理由がわからなかったが、後になってやっとそれが理解できた。

たまたまではあったが当日、韓国 第11代目の全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領がアメリカから凱旋帰国、空港がそのときばかりは完全に機能を停止してしまったのだ。乗客は空港の機能が回復するまで長時間足止めを食らい、さらにセキュリティのため異様とも思える身体検査と荷物検査を受けた。それでも数時間後には金浦空港を出て無事PCを日本へ持ち帰ることができた。

A.I Soft Koreaが当社の販社になってくれたことで、私は度々訪韓する機会を得た。反対にスク社長も当社へ何度か足を運ぶことがあった。仕事の後や休日にはお互いに自宅を訪れ、彼の奥さんに半日かけて作っていただいた韓国の家庭料理をごちそうになったり、私の家では彼と夜遅くまで酒を飲み交わしたりしたこともあった。

また、スク社長の依頼で当社へ5名ほどの若いエンジニアを招聘し、数年かけてソフトの共同開発をしたこともあった。休日には、ゴルフ、カラオケ、食事会、屋台で一杯など、会うたび頻繁に将来の話や楽しいひと時を重ねていった。こうして我々は互いに理解と友情を深め30年近い真の友人になったのである。

結果的にスク社長は数年かけて当社のFALCONを、サムソン、現代自動車、ポスコ、高麗システム、他2社(会社名が思い出せない)の6社と契約することに成功した。

こんなこともあった。

ある日、韓国のスク社長から「高橋さんの著書が韓国の本屋で売られているよ」という連絡が入った。始めは何のことかよくわからなかった。だが調べてみると、会社を創業した82年に、私が書いた『パーソナルコンピュータのためのデータ通信』(工学図書出版、180ページ)の本が、ハングルに翻訳され無断で韓国の本屋で売られていたのである。

事実を探ってみると、どうやら韓国のある会社のエンジニアが工学図書と私に無断でコピーして出版していることがわかった。訪韓した際にどうしても一言ぐらいクレームを言っておきたかったので、その作者をスク社長のオフィスに呼んでもらい話をした。

しかし、私の問いに悪びれもせず、「無断でコピーしたことは謝る。しかし、韓国ではこの程度のことは、たいした問題ではない。著作権についても気にしていない。」との返事だった。あまりにも無知で身勝手な考えに憤りを通り越してがっかりした。まー、技術書のような本だったので部数もそれほど売れてはいまい。自分もそれまでとしたが、ITの世界では、この考えは長くは通用しないだろう。

韓国ではその後も様々なことがあったが、ビジネスでもプライベートでも、いつもそのときはスクさんが私の隣にいてくれた。今、彼は一線を退いたが、彼とは今でもFacebookやメールで連絡をとり続けている。

いつまでも変わらない永遠の友である。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介

下記の写真は、オリジナルの日本版の本(左)と無断コピーされた韓国版の本。

▼関連リンク
SOTEC e-one(PC Watch)
TG(三宝コンピュータ)
端末エミュレーター「FALCON」


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