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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第13回 「井の中の蛙、大海を知らず」- その1
~ガラパゴス化した日本のIT企業~ 2014年11月20日配信

1990年代、米国で開催されたCOMDEXやCESなどの展示会を毎年見に行った。当時はこうした展示会を見て、当社もいつかは出展したいと思ったものだ。

当社が初めて展示会に参加したのは、会社創業直後にNECの主催で開催された「NECパソコンフェア?」(名称は定かではないが)だと記憶している。PC-9800シリーズが国内のIT市場を席巻し始めたころだ。わずか1小間の小さなブースを借りて自社の通信ソフトを陳列した。説明員は私と社員の2人だけ。準備や搬入、搬出もすべて自分達だけでやった。初めてインターコムの看板を掲げてデビューしたのでとても緊張したが、一方で大変誇らしい気持ちも持てた。

開催中は食事の時間もなくブース内でサンドイッチをパクついたものだ。ブースを離れるのはトイレのときだけ。最近の展示会のように、決まった昼休みを取ることもできなかった。展示会が終わると、自分達だけで機材を搬出して帰宅するような状況だったが、気持ちだけは十分やりこなした充実感に溢れた。

会社創業以来、今日まで当社が出展した展示会はかなりの数に上るだろう。国内開催の「COMDEX Japan」や「Internet World」を皮切りに毎年5本程度は参加していたように記憶している。特に、PCが全盛期のころ、日経BP開催の「World PC Expo」では全社を挙げて展示会に臨んだものだ。2階建ての巨大なブースで、たぶん20小間前後はあったかと思う。後にも先にも当社にとってこのブースが最大の規模だっただろう。

ここ何年かは「情報セキュリティ EXPO」「クラウド コンピューティング EXPO」「Web&モバイル マーケティング EXPO」「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス」などの大型の展示会や、東京と大阪で自社主催のプライベートフェアを実施している。

展示会に出展する目的は色々ある。当社の場合は「すべての販売戦略はここから始まる」と言ってもいいくらい明確なミッションで臨んでいる。一般的な展示会でありがちな「とりあえず資料を配布する」とか「トレンドを掴んでもらうために新商品を紹介する」といったことを極力避け、新たな集客を得てそこから新しいビジネスをスタートさせることに特に注力している。

お客様と直接お会いし、Webや雑誌などの広告だけで紹介できないことをフェイス・トゥ・フェイスで話せることが展示会の醍醐味だ。私個人は、昔から知っているIT業界の諸先輩方や知人に、会場でお会いできることを一番の楽しみにしている。ただ、ここ数年は知っている方の顔を見る機会がめっきり減ってしまった。たぶん私と同世代の方であれば、既に一線を退いてしまっているからだろう。なんとも寂しい限りである。

当社が海外の展示会に出展したのは台湾で開催されたCOMPUTEXと、ドイツのハノーバーで開催されたCeBIT(セビット)が初めてとなる。この両方とも、子会社だった台湾インターコムからの出展だ。COMPUTEXもCeBITも、こうした展示会では海外から来るバイヤーとの直接の折衝が目的となる。そのため英語は必須だ。なので、日本での展示会のようにブースに外国人が訪れると「今、英語ができる人を呼んでくるのでちょっと待って!」とはならない。

最近、海外でのIT関連の展示会を見に行くと、日本企業の姿がまったく見えない。これはソフト企業ばかりではなく、大手IT企業の不参加も目に付く。例えば、今年のCOMPUTEX 2014では1,700社以上の国内外の企業が出展した。アジア最大規模でCeBITに次ぐ世界第2位のIT関連の展示会だそうだ。5日間の来場者数は13万人。今春に東京ビッグサイトで開催された日本最大級のIT展示会「Japan IT Week 2014 春」の3日間の来場者数が80,000人だったのと比べると、COMPUTEXの規模がいかに大きいかわかる。数年前までこのCOMPUTEXで常連となっていた日本を代表する富士通、ソニー、NECなどのブースは今年なかった。私自身3年前に訪れたが、日本企業の参加意識の低さは数年前から始まっていたように思える。となれば、他のIT企業も出展しているとは考えにくい。ましてソフト企業やベンチャー企業は皆無に等しいかも知れない。

ドイツのハノーバーで毎年開催されている世界最大のIT展示会であるCeBITは、2014年は出展社数3,400社で来場者数は21万人とのことだ。すごい規模である。しかし、ここでも日本企業の元気の無さが目に付く。CeBIT 2014の詳細がわからないので2013年のデータでいうと、中国からの出展企業は447社、台湾と香港からの出展企業は196社、韓国からは70社、特にサムソンはその前の年に比べて2倍のサイズのブースで出展したとのことだ。米国からは76社が出展。

しかし日本からは3社しか出展しなかったそうだ。わずか3社である。なんとも情けないというか悲しい状況だ。もともといくつかの日本企業は既に欧州に現地法人や販売代理店を持っているところが多いので、彼らが出展しても国内企業としてカウントされてしまう場合もあるので何とも言えないが。とは言え、これは他の海外企業も同じだろう。しかし、それにしても世界最大の展示会で3社とは少な過ぎはしないか。

日本国内には数多くのIT関連展示会があり、その展示会には大小併せて多くの企業が参加している。しかし、なぜか海外での展示会になると不参加なのである。実に不思議である。日本には輸出を生業としている業種がたくさんある。これらの企業ならば、当然海外に出て行くため数々の展示会へ積極的に参加していると思う。

しかし、ITとなると途端に勢いがなくなるのである。そういう自分もそうであるが、なぜか日本のIT企業は海外が弱い。たいした理由ではないかも知れないが、もしかしたらこんなところに原因の一端があるのかも知れない。

(1) そもそも日本でITが始まって以来、日本の企業が海外へ進出して成功した例を未だ聞いたことがない。特にソフト企業での成功はないと思う。半導体の輸出などは相当やっていると思われるが。

(2) 日本にはある程度のITマーケットがあるので海外に出てビジネスをやらなくても生きていける素地がある。幸せなことであるが、その反面海外へ出て行くモチベーションが希薄になってしまったかも知れない。

(3) IT業界の中でグローバル化が推進されていないため、グローバル人材が育っていない。

(4) 日本のPC、携帯、スマートフォン、TVなど、IT関連のメーカーが、ここ数年でほとんど撤退してしまったため、海外へ出るメーカー主導のビジネスがない。

(5) 自社のことで言えば、例えば、英語バージョンや他国向けのソフト商品を開発しても、その商品を誰が売ってくれるのか、販売ルートがわからない。一度、子会社の台湾インターコムから海外への売り込みをやったが、マルチランゲージやマルチOS、多国籍向けのユーザーサポートなど、難しい問題が山積みになった経験がある。

次回に続く……。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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