【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第20回 酒とバラの日々 2015年6月17日配信

今年もまたバラの季節がやってきた。

15年前に奥方と共通の趣味で始めた我が家のガーデニング。その中で、主役は何といってもバラである。そのバラが、この5月初めから大きく蕾を膨らませてきた。自宅の庭には10年ほど前から3種類のバラが5株植えてあり、1株から毎年100輪前後の花が咲く。

毎年のことだが500輪ほどのバラが同時期一斉に花開くのはとても見応えがある。「バ~ラが咲いた、バ~ラが咲いた、真っ赤なバ~ラが……」と、軽く歌でも口ずさみたくなる。

自宅のバラは、すべて「つるバラ」である。

1つ目は、春一番に咲く「早咲きのモッコウバラ」と揶揄される小ぶりの白いバラ。どんどん咲いてはどんどん花びらを散らす。病気にめっぽう強く、手入れもほとんどいらない。成長がとても早く、適当にカットしてやらないと若者の髪のようにつるがどんどん伸びてしまう。

2つ目は、「アンジェラ」という鮮やかな濃いピンク色のバラ。花びらはそれほど大きくないが開花時の色彩の豊さには一見の価値がある。しかし、このバラは育てるのがとても厄介だ。

花びらの派手さとは裏腹に鋭いトゲが沢山あり、他からの介入を寄せ付けない堅牢さを持っている。「美人にはトゲがある」を地でいくようなバラなのだ。自分はこのバラの手入れが一番苦手である。

とにかく、長く伸びたつるを誘引するとトゲが引っ掛かり、素手のまま触ろうとするものなら手や腕は血だらけ傷だらけ。有刺鉄線の針金を直接手で触るようなものだ。

それでも、この「アンジェラ」を咲かせたいのは、小説風に気取って言うなら、何度も恋人に裏切られながらも、最後まで征服したい欲望に突き動かされていた若かりしころの気持ちが、今でも多少残っている(?)からではないかと思う。

3つ目のバラは、私が一番好きな「ピエール」である。乳白色の花びらの外枠だけ薄いピンク色に染めた、とてもセクシーで美しいヨーロピアンチックな八重咲きのバラである。白桃のようにゴージャスな花を咲かせてくれる割には、それほど手入れも難しくなく、私の一押しのバラとなっている。

「ピエール」が咲き始めると、トキメキさえ感じることもある。それほど、色といい形といい、愛らしいバラである。庭で「ピエール」の顔を伺うのが毎朝の日課となる。ずっと眺めていると、もしかしたら魂でも宿っているのではないかと思うときがある。もちろん他のバラや花にも生命はあるが、「ピエール」だけは特別に映る。

バラが咲いたら自宅に友を招き、「酒とバラの日々」と洒落て、ワインやビールを飲みながらバーベキュー・パーティーでもしよう! 今は、そのことを頭に思い描きながら庭の手入れに余念がない。

ご存じかも知れないが、バラは他の花に比べて豪華さは特上だが、美しい花を咲かせるまでにはとても手間がかかる。個人的な感想だが、花の中では育てるのが一番難しいのではないだろうか。

まず、冬の寒い12月ごろが手入れのベストシーズンとなる。なぜ寒い冬かというと、長く伸びた枝に柔らかさと粘りが出てきて、誘引しやすくなるからだ。他の樹木や花は春から初夏にかけて苗木を植えるのが一般的だが、バラの場合は暖かい時期に手入れをすると水分を沢山吸っていて、枝がポキポキと簡単に折れてしまう。しかし、寒い中でトゲがある枝を誘引するのは結構辛い作業だ。

次に、つるを渦巻き状に巻いて、フェンスやアーチに綺麗に引っ掛ける。この作業を怠ると、枝がぐしゃぐしゃに伸び、最盛期に形が崩れて花が綺麗に見えないことになる。そのため、自宅では、毎年この作業だけバラの専門家に手伝ってもらっている。

土の入れ替えと肥料の補充は、私と奥方の分担だ。これを小まめにやらないと、開花シーズンになっても最高の花が期待できない。また、毎月1回程度消毒もしなければならない。雨が降った後そのままにしておくと、枝が白いうどん粉で包まれたような病気に侵されてしまうことがある。

バラは、専用の土と肥料が必要になる。また、1日に1度の水やり、日当りの良い場所、適度な風も必要だ。まったく「バラ」は贅沢な花だ。これまで、バラなんてもう止めようと何回も思ったが、それでも花が咲いたとき庭を豪華に演出してくれる風景が忘れられず、なかなか止められないでいる。

バラが咲くと、切り花にして自宅の棚や会社の受付、自分の机に飾っている。なかなかロマンチックである。自分で育てたという自負もあるので、一層愛着が増し、自慢したくもなる。

近所の奥さん達が自宅の前を通るとき、「いつも楽しみにしてま~す」とか、「今度、お庭に入らせてくださ~い」とか言われると、内心ちょっと嬉しくなる。以前、お隣の歯科衛生士さんとすれ違ったとき、バラを3~4本プレゼントしたら、とても喜んでくれた。

ガーデニングを始めたころは、せっかく綺麗に咲いているのにそれを摘んでしまうのはちょっと可哀想かなと思ったが、一番綺麗なときに大勢の人にお披露目する方が、花にとってはより幸せなのではないかと思えてからは、花を見る目が少し変わってきた。

バラは愛情を込めて手入れさえ怠らなければ、ちゃんと結果だけは出してくれる。

このことは、もしかしたら我々の仕事に相通じることかも知れない。ソフトウェア商品の開発も、品質検査も、営業も、普段からの努力を怠らなければ、最後には必ず大きな「成功の花」を咲かせてくれるのではと思う今日このごろである。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


咲き誇るバラ


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