【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第24回 「お父さん、ルンバが欲しい……」 2015年10月21日配信

久々に奥方から聞いた「おねだり」の一言。

何のことかと思いきや、最近テレビショッピングなどでよく見かけるロボット掃除機のことらしい。そして、多くのロボット掃除機のことを総称して「ルンバ」と呼んでいることがわかった。

なぜこの掃除機が欲しいのか尋ねてみると、急に自宅にお客さんが見えることになったときに、ホコリでも浮いていたら恥ずかしいそうだ。そんなときは、掃除はロボットに任せて、自分は他の準備ができるということらしい。

「その程度のことなら普段からやっていれば、何も心配する必要はないんじゃないの?」と、言いたいが。

「おねだり」の数日後、たまたま自宅のエアコンが故障したことを理由に、馴染みのナショナルショップの店員さんを呼びつけ、修理のついでにロボット掃除機の実機デモをお願いするほどの熱の入れようである。

私は、どうせ買っても半年ぐらいで、いつものように粗大ゴミになってしまうと思い、興味のない振りをしてソファーに座り、聞き耳だけ立てていた。値段は6~7万円台と結構高い。その日はデモだけで終わったが、奥方の好奇心は日に日に増すばかりだ。

そんなことがあり、実際にロボット掃除機を使っている社員に使い勝手などを聞いたところ、とても便利で、タイマーさえONにしておけば、外出の間に掃除をしてくれ、仕事を持っている主婦にとって、とてもありがたいマシーンだという。

毎週受けている英会話のレッスンで、たまたまロボット掃除機がテーマとなり、先生(米国出身の女性教師で、日本人と結婚している主婦)から、「それくらい買ってあげなさいよ! 専業主婦の仕事って結構大変なのよ、食事の支度と後片付け、洗濯、部屋の掃除、風呂掃除などなど。You(貴方)より、よほどハードな仕事をしているんじゃないかしら!」と、自分のことのようにエキサイトし、英語できつく諭されてしまった。レッスンなのにそこまで言われる筋合いはないと思うのだが……。

今回、自宅でデモしてもらった製品はパナソニック製だったが、「ルンバ」に代表されるロボット掃除機を最初に開発したのは、残念ながら日本のメーカーではなく米国のアイロボット社である。

本来、家電といえば日本のお家芸とも言われる時代があった。しかし、最近ではこうした革新的なグローバル製品が日本の家電メーカーを凌駕して、海の向こうから次々と入ってくることも珍しくなくなってきた。

調べたところ、「ルンバ」はマサチューセッツ工科大学でAI(人口知能)を研究していた3人の科学者が立ち上げたロボット専業のベンチャー企業である。もともとはNASA向けの火星探査ロボットなどを研究していたが、その後はホームロボット市場向けに転身し、コンシューマー製品を大ヒットさせて現在のようなグローバル企業に成長した。

「ルンバ」をひっくり返してみると、最新ロボットを彷彿とさせる技術やアイデアがいくつも見受けられる。床を叩きながらゴミを集める特殊素材のローラー、壁際や部屋の隅のゴミを回転して掻き出すクリーニングブラシ、電池を自動充電するための電池ドックなど、長年蓄積した様々な経験が網羅されていることがわかる。

また、赤外線センサーやAI技術で、壁や窓ガラス、段差などの障害物を回避する工夫もされている。驚いたことに、掃除が終わると自ら充電ドックまで戻り、自動でバッテリーも充電できてしまう。

以前テレビで見たことがあるが、こうしたロボット技術は、福島原発事故の現場撮影や、中東の地雷除去などでも使われたそうだ。アイロボット社は、すでにこの分野では20年以上も研究を重ねロボット産業界をリードしている。

一方、数年前にサイクロン式掃除機で一世を風靡したイギリス家電メーカーのダイソン社がある。ダイソン社は、1993年、開発者のジェームズ ダイソン氏により創業された電気機器メーカーである。

これまで家庭用掃除機といえば、交換式の紙パックを使用した掃除機が一般的だったが、「ダイソン」は紙パックを不要にし、吸い取ったゴミを外側のドラムと内側のドラムで2回分離するデュアルサイクロンという方式を開発した。細かなゴミやチリを遠心分離して、フィルターの目詰まりを防ぎ、ダイソンの広告の謳い文句にもなっている「強力な吸引力」の差を見せつけた。

さらに、ダイソン社のもう一つのベストセラー製品である羽根なし扇風機は、長方形リング型のモダンな形状で日本のお茶の間をアッと言わしめた。赤ちゃんや小さなペットがいる家庭での安全性を考慮した、とても画期的でユニークな製品である。

実は私も1台購入し会社で使っているが、なかなか優れものである。

従来の扇風機とは一線を画したデザインは、私の会議室でこれを見つけたお客様からよく話題にされ、本題に入る前のウォーミングアップ・コミュニケーションになることもしばしばである。

そのダイソン社が、近々「ルンバ」に対抗する強力なロボット掃除機をリリースし、ガチンコ勝負するとのことだ。また国内メーカーからも、「ルンバ」に似たロボット掃除機や、「ダイソン」のサイクロン方式を採用した家庭向けの掃除機が次々発売されている。

しかし、こうした状況はどうなのだろうか?

ビジネスの面から見れば、これは一般的なことなのかも知れないが、日本のお家芸とも言われてきた家電分野での二番煎じはちょっと面白くない。やはり、国内メーカーには海外から真似されるぐらいの革新的でオリジナリティの高い製品を最初に出して欲しい。

日本には、パナソニック、日立、ソニー、東芝、三菱電機などの、世界に誇れる総合電機(家電)メーカーがいくつもあるが、最近はどうも元気がないように思えてならない。実際、業績もあまり芳しくない。

また、「アイロボット社」や「ダイソン社」に代表されるような、独立系研究開発型のベンチャー企業も出てきていない。

機能追加や品質向上などのバージョンアップなど、従来製品の焼き直しばかりに終始し、世界中の人々をアッと驚かせるような画期的で魅力的な製品が、日本のメーカーから出なくなってきたと感じているのは自分だけだろうか?

以前は、ソニーの「ウォークマン」、NECの小惑星探査機の「はやぶさ」、二足歩行式ホンダ・ヒューマノイドロボットの「ASIMO」、青色発光ダイオードなど、世界に誇れる製品や革新的な技術がたくさんあったと思うのだが……。

「がんばろう! 日本」

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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