【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第33回 ジェネリックの功罪 2016年7月20日配信

5~6年前から、2か月に一度、自宅近くにある大学病院へ行き検診を受けている。

それまで自分では、特に悪いところもなく、健康だと思っていた。ただ、朝起きたとき心臓に妙な重苦しさを感じたことが何日か続いたので、それがきっかけで病院へ行くことにしたのだ。

初診では、特に心配ないと言われたが、そのときの血圧が、上は180、下は90と高血圧だったことから、「しばらく薬を飲みながら、定期的に病院へ通って様子を見ましょうか……」と先生に言われ、それ以来健康診断も兼ねて通院している。

病院では毎回、血液検査、尿検査、血圧測定と先生との問診を受けている。半年に一度は心電図の検査もする。以前にMRIとCTスキャンも一度ずつ受けた。

最近は、薬のおかげで、血圧は上が120、下が60と、ようやく正常な値に戻ってきた。先生からは、「血圧はもう大丈夫です。しかし、少し血糖値が高めだし、善玉コレステロール値も少ない、もっと運動をしてください。甘い物やフルーツも極力少なめに!」と毎回同じご指導をいただく。

今は特にこれといった運動をやっていないので、このご指摘はグサリッ! と心に響く。また、好物の甘い物やフルーツを控えることも私にとってはかなりハードルが高い。

診察を終えた後はいつも決まって調剤薬局に立ち寄り、病院から指定された4種類の薬を2か月分もらって帰る。1日に7錠飲むため2か月分で薬局のレジ袋一杯の量になる。薬代も1万円近くと結構な額である。

しばらく調剤薬局の待合室で待っていると、私と同じように、レジ袋を抱えたシルバーの方に多く出会う。「あッー、自分もとうとう薬のお世話になる歳になってしまったな~……」と、近頃しみじみ思う。

薬局からもらう薬は、最近テレビCMなどでお馴染みの「ジェネリック医薬品」だ。とにかく価格が安い。例えば、私が前に飲んでいた血液中のコレステロールや中性脂肪を低下させる先発メーカーの薬を、ジェネリックに変えてもらったら、1錠あたりの価格(薬価)が、前者は81.6円で、後者が33円となり、半額以下になった。

1錠あたりでこれだけの差があると、2か月分まとめて買えば結構大きな差額になろう。私はまだ現役で、年金のお世話になっていないので、薬代はそれほど大きな負担にはならないが、定年退職されている方や年金生活のお年寄りには、このジェネリックの価格差は大変ありがたいことだと思う。

ところが、いいことずくめに見えるジェネリックで、最近、安全性や有効性などについて、ネットで懐疑的な意見が見られるようになってきた。

例えば、先発メーカーより効果が薄かったり、反対に効き過ぎたり、中に含まれる添加物のアレルギーが検出されたりするものもあるとのことだ。これには、「えっ!!~」という感じがした。

これまでジェネリック医薬品への自分の理解は、特許が切れた先発医薬品と同じ成分で、効果もまったく変わらない、安価で安全な薬というだけだった。

しかし、調べてみるとジェネリック医薬品は、先発メーカーのような多額な開発コストや十分な安全性の試験、品質検査の期間などをかける必要がなく、極端な言い方をすれば同じ成分の薬さえ作ればいいらしい。だから安価に提供できるのか???……。

長年ジェネリックの安全性を信用して使い続けてきた自分にとって、知らなかったとはいえ、これらのことは予想外であり、多少たりとも裏切られた感じがした。

調剤薬局の方に聞いても、「単純に特許が切れた後発メーカーの薬で成分は以前の薬と同じです……」、としか教えてくれない。

こんなところから、今までであれば薬をもらう際には、無条件に「ジェネリックでお願いします!」と言ってきたが、最近ではネットなどでリスクを調べてから購入することにしている。

安価なジェネリック医薬品とはいえ、品質や有効性には十分過ぎるぐらいの安全性を保証して欲しいものだ。

さて、話は変わるが、この「ジェネリック医薬品」から派生して、最近では「ジェネリック家電」とか「ジェネリック家具」という言葉も生まれてきた。

実は私も数年前から、このジェネリック家具を使っているが、とても満足している。

ジェネリック家具とは、意匠権の期限が切れた有名なデザイナーによる名作家具を復刻生産したものである。よくある時計やバッグなどの不法な模倣品と違い、ちゃんと法律に則って正規に作られた家具である。価格はオリジナルと比較すると、はるかに安い。

例えば、イタリア製「ポルトローナ・フラウ」の2人掛けソファーの名作モデル「チェスター」の価格は、たぶん200万円前後すると思うが、数年前に購入した自宅の「チェスター」のジェネリック家具は、40万円ほどだったと記憶している。今なら、ジェネリック家具のさらなる普及でもっと安くなっているかも知れない。

一度、有名家具店にて、何食わぬ顔で本物の「チェスター」に腰をかけてみたことがあるが、私の使っているジェネリック家具と、見かけも、座り心地も、手触りもなんら変わらなかった。

有名デザイナーの家具の素晴らしさを味わってみたい方は、ぜひ一度、お試しあれ。

「ジェネリック」は、すべてはオリジナルがあってこその二番手である。我々もそうだがメーカーを標榜している会社なら、オリジナルにこだわって、安心・安全で、高品質、安価な商品を生み出して行きたいと思っている。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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