【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第36回 現実味を帯びてきた「なくなる仕事」 2016年10月19日配信

皆さん、スーパーでセルフレジを使ったことはありますか?

私はこのごろでは、必ずセルフレジで清算をするようにしている。
この機械、本当にすばらしい。たぶん日本製だと思うが、ユーザーインターフェースといい、機械のタッチ感や正確さといい、本当によくできている。

何年か前から東京ビッグサイトで開かれている「リテールテックJAPAN」で、東芝テックさんや日本NCRさんなどのブースでデモを見かけることはあったが、実際に買い物で使ってみると、こんなに賢かったのかと本当にびっくりした。

セルフレジは、その名前のようにレジ係がいなくても自分だけで清算できてしまうレジスターである。商品に貼られたバーコードをスキャンするだけでタッチパネルに商品名と購入価格が表示され、あとは、横にセットしたレジ袋へ商品を入れ、全部のスキャンが済んだら支払いボタンをタッチするだけで精算が終わる。

現金でもクレジットカードでも支払い可能だ。しかもポイントカードまで使える。スキャンを忘れて商品をレジ袋に入れたりすると、機械がちゃんと「人の声」で注意喚起までしてくれる。

最近まで、テレビの録画操作もできなかった機械音痴の奥方が今では普通に使いこなしている。一度この機械に慣れると、これまでレジ係にお願いしていた支払いがとても“まどろっこしく”思えるようになった。

初めてセルフレジに挑戦したときは、スキャンがうまく通らなかったり、バーコードが付いていない食品の操作に困り店員さんを呼んだこともあったが、1度、2度と使っていくうちに慣れてしまった。

しかも、この機械はまだ普及し始めたばかりで活用している人も僅か。セルフレジはいつも空いている。最近、見るからに80歳を超えているご婦人が、ハツラツと、この機械を使いこなしている姿を見て、つくづく便利な世の中になったなーと感心している。

最近では、コンビニでもスーパーと同じようにセルフレジが備えられてきた。高速道路での料金払いもETCでほぼ自動化されているのはご承知の通りだ。JRや私鉄でも今や自動改札が当たり前。Suicaカード1枚持っていれば、どこの駅でも簡単に通ることができる。もちろんバスも同じだ。

また、銀行での現金の引き出しや振り込みも今ではコンビニやスーパーでできてしまう。以前はレンタルビデオ店で頻繁に借りていたDVDも今ではほとんど借りに行く必要がなくなった。このごろでは家のソファーに寝そべって、オンデマンドサービスで直接ビデオを見たりしている。

このように、ちょっと自分の周りを見渡しただけでも、従来人手に頼っていた仕事やサービスをネットや機械やロボットが代わりにやってくれるようになった。優れた技術やイノベーションのお陰で我々の生活に利便性や潤いが生まれてきた。しかし裏を返せば、単純に我々の働く場が奪われているということでもある。

2020年に東京でオリンピックが開催される。あと4年後のことである。華やかな東京オリンピック開催の一方で、この年を一つの節目として我々の会社や職場にも大きな変化が起きようとしている。

数年前にあるビジネス誌が発表した「2020年までになくなる仕事」「生き残る会社」の記事を読み返してみて、今こうした世の中が現実となっていくことに大きな期待と不安を感じている。

記事の中では、先ほど例を挙げた仕事以外にも、電車やタクシーの運転手、教員、新聞や郵便の配達、警備員、保険販売レディ、一般事務、会計士、受付・案内業務、秘書、倉庫作業員、工場労働者、金型職人なども候補にしている。

確かに電車の運転手、あの「ゆりかもめ」ではすでに無人化が進み運転手も車掌も乗っていない。完全な自動運転である。また、最近日産自動車がさかんに宣伝している矢沢永ちゃんのCMを見るにつけ、普通自動車でもITやAI、ビッグデータなどの先進技術を駆使し、自動運転で走れることは今や遠い夢でなくなった感がある。

米国のある企業では、シンガポールで自動運転タクシーによる無人の配車サービスの実験をスタートしているくらいだ。

今回、私がこの「なくなる仕事」の中で特に興味を持ったのは、我々の仕事に直結しているプログラマーや訪問型営業、中間管理職も含まれていたことである。

例えばプログラマー。近年では多くのIT企業がソフトウェアをオフショア開発などで海外にアウトソーシングしている。特に大規模案件の開発では、人的リソースや技術ノウハウが豊富で、しかもそれを安価に受け入れてくれる会社なら、必ずしも日本の企業にこだわらないとしている。

したがって日本のソフト会社も、今後は海外企業との差別化や特徴あるサービスなどを打ち出せないと明るい将来を描けないかもしれない。

また、プログラマーやエンジニア自身も新たな技術やスキルを磨いておかなければ、グローバルで優秀な人材にその座を明け渡すことになるだろう。

訪問型営業や従来のようなルート営業も同じだ。最近はネット通販などの普及で、顧客はどんな商品でもネットから購入できるようになった。低価格でしかも物流革命のお陰で、午前中に注文したものが午後には届けられる時代である。

こうした高度なサービスの普及で従来型訪問営業などの活動範囲も一気に狭められようとしている。

どの企業にもいえることだが、これから本当に期待される営業マンは、自ら市場をリサーチしドリルで風穴をこじ開けるように新規顧客を開拓していける人である。顧客からのコールで初めて動き出すような待ちの営業ならば不要になるかもしれない。

中間管理職も今や安閑としてはいられない。昨今では大企業が中間管理職の削減に手を付け始めてきた。アイデアが出せない調整型の管理職、明日休職しても業務上に支障が出ないような管理職はターゲットになり兼ねない。今日では管理職といえども、何もせずに留まれるポジションなどは存在しないのである。

あと数年も経つと、「なくなる仕事」は今以上に顕著化してくるに違いない。
個人も会社も、いつそうした時代になっても変化に対応できる能力を今から準備しておくべきだろう。

ダーウィンの言葉が思い浮かぶ今日このごろである。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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