【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第46回 なくした『黒革の手帳』 2017年8月23日配信

今回のテーマは、松本清張の小説の話ではない。
私の大事な『黒革の手帳』のことである。

この手帳は私の重要なライフツールであり、外出する際は必ず財布と共に鞄に入れて持ち歩いている。その手帳をなくしてしまった。

なくしたと気が付いたのは、ある月曜日だった。
会議に持って行こうと鞄を見たらなかった。

「きっと家にある」とその日は気にしていなかったが、家で探したが見当たらない。
「きっと会社のどこかだ」と翌日会社に行ったが見つからない。
まさかなくしたのでは? いや見つからないだけだ。

そこから大捜索を始めた。

(1)まず最後に使った記憶をたどる。家でTVで見た内容をメモしたのが1週間前。だったらこの1週間だ。

朝昼晩、すべての行動を思い出した。
「あの日は某社長とお寿司を食べた、お寿司屋さんで鞄はどこに置いたっけ?」
「あの日は車で展示会に行った、車にあるか?」
「TVのメモの後、どこに置いた? 新聞などに挟まってないか?」
「会議に持って行って、どこかに落としたのでは?」
「電車で落としたのか」

思い当たるすべてに電話を掛けて、落し物を聞いた。
藁をもつかむ気持ちだ。しかし「ない」。

(2)会社では、いつも私の部屋を片付けてくれる社員を呼び、「誰にも言わずに探してくれ」と頼んだ。その社員はすべての会議室や、私の行きそうな場所をくまなく探してくれたらしいが、「ない」。

(3)自宅では、新聞やチラシと一緒に片づけてしまったのではないかと奥方に疑いの目を向けしつこく尋ねたが、いい加減にして欲しいと不機嫌な顔をされてしまう始末。

(4)もちろん車は徹底的に探した。しかし「ない」。

そんな大捜索を2、3日続けると、心は「焦り」から「むなしさ」に変わった。デスクで何度もため息をついてしまった。

とにかく手帳を見つけたい。しかし、今回の『黒革の手帳』の紛失が、もし自宅やオフィス以外でなくしたなら、手帳の中には私の名刺が入れてあるので連絡はあるはずだ。もし一般の人が拾ってくれたなら持ち主の心配を忖度して必ず連絡してくれるとかなり期待し待つことにした。

しかし、ため息だらけの1週間以上経っても何の音沙汰もない。

“これは本当になくしたんだ、諦めるしかない”と気を取り直して同じ手帳を購入することに決めた。

しかし、以前購入した書店なら同じ商品が置いてあるはずと勇んで買いに行ったものの、その期待は見事に裏切られた。店員さん曰く、『手帳は季節物であり、この時期(7月)になるとほとんど売れない。なので、今では手帳類の商品はすべて引き払い、棚には他の商品を置いている』とのことだった。よく考えれば、その通りだ。

諦めずにネットならあるのではと考え、Amazonで調べてみると、あったではないか。そうなのか! 書店と違ってネットなら陳列棚が不要なので、季節商品も常に置けるという訳だ。これは今回手帳をなくして初めて知った。

早速、同じ手帳をAmazonから取り寄せ、机の上に置いた。

しかし、ハード(手帳)そのものは取り戻せたが、すべてが解決した訳ではない。問題は手帳に書き込んである様々なコンテンツである。

何とか再び中身を一から書き込まなければならない。うんざりである。

まず、仕事上のスケジュールは、グループウェアで直ぐにでもわかるようになっている。必要なら新しい手帳に書き写せばそれでこと足りる。これらの復元はいとも簡単だ。

次に、プライベートなスケジュールや個人情報の復元は厄介である。

例えば病院の予約日、食事会や飲み会の日時と場所、親戚が訪ねてくる日時、趣味のSAXレッスンの予約日も。スケジュール以外には、家族全員の生年月日(家族には叱られるが全員憶えていない、すみません!)なども記してある。その他には、友人の住所や電話番号やEメールアドレスなども大量に書き込んである。これらをすべて復元するのはかなり難しい。

さらに、手帳をなくして一番気掛かりだったのは、PCやスマホでいつもアクセスしているネットショッピングやプロバイダーなどのアカウント情報やパスワードである。

さらには、JALマイレージや「ふるさと納税」などで使うパスワードなども含まれる。すべてのアカウント情報は、手帳を紛失したときのことを考慮して、一応は英文(大文字、小文字)+数字+ヒントの組み合わせで登録してある。

しかし、手帳以外にバックアップはなく、果たして全部思い出せるだろうか。近年のサーバー犯罪から身を守るため、よく世間ではパスワードを適切に変更するよう注意を促している。自分も十分注意していたつもりだ。

しかし、IT会社で働いていて、セキュリティやそうした怖さを十分心得ている自分でも、手帳を紛失したときのための対策は、ほとんど無防備のままであった。

また、ため息が出た。

ここで朗報があった! 新しい手帳に少し記入を始めたころ、「手帳を預かってます」という連絡を受けた。展示会場の管理会社からだった。

“着払いで送ってもらえませんか?”というお願いをし、手帳を手にしたときは飛び上がるほどの嬉しさと安堵感を覚えた。

愛しい愛しい「黒革の手帳」、よく戻ってくれた!

今回わかったことは、手帳でもスマホでも、やはり中に入っているもののリスト化が必須であり、アナログでかつ原始的かも知れないが、個人情報はすべて別の「紙」にでも書き写しておいた方が、いざという時には役立つというものである。

皆さん、紛失には十分注意しましょう。
それからアカウントやパスワードなどのセキュリティは、絶対見破られない工夫を心掛けましょう。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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