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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第48回 死の淵から生還 2017年10月18日配信
「歳をとったらいつかは!」と思っていたことが、なんの前触れもなく突然やってきた。
熱帯夜を迎えた7月のある晩、お腹と胸の辺りがキリキリと急に痛み始めたのである。胃薬を飲み、しばらくすれば治まると軽く考えていたが、いっこうに治まらない。逆にその痛みは我慢できないほどの激痛へと変り始めてきた。
「これはちょっとおかしい。ただ事ではない!」と思い、急ぎ奥方に救急車を呼んでもらい、かかりつけの大学病院へ緊急搬送してもらった。
病院に到着するやいなや、待ち構えていたドクターや大勢の看護師に囲まれて、簡単な問診と診断を受けた後、バタバタとすべての身ぐるみを剥がされ検査着とおしめを付けられた。そして訳のわからないまま、処置室へ運ばれていったのである。
「いったい自分の身に何が起きたのか?」。
意識はハッキリしていたので、ドクターや看護師の話し声や動きはよくわかった。周りの慌ただしい状況からきっと何か大きな病気にかかってしまったのだと思った。このとき、「もしかしたらこれまでかな……でもまだ生きたい」などと考えていた。
しばらく経ってドクターから告げられた病名は、思いも寄らぬ「急性心筋梗塞」であった。心臓の冠動脈血管が詰まって、血液の流れが悪くなってしまったとのこと。
これまで、大学病院で2か月に1回の定期健診を、そして半年に1回の心電図も取っていたが、まったく悪い症状は見つかっていない。高血圧やコレステロールの薬を飲んでいるものの正常値の範囲であり、原因など思いつかない。
病名がわかったところで手術台に乗せられ、カテーテル検査を受けた。その結果、心臓の左回施枝という箇所に狭窄が見つかり、すぐに緊急カテーテル治療を受けることになったのである。
治療はまず右手首への局部麻酔に始まり、太い注射のような針をズブリと刺された。特に痛みはなかったが、「ズッ・ズッ」という音が聞こえてとても怖かった。この治療は、1時間程度で終わったようだが、その後、意識がハッキリ戻ったのはCCU(集中治療室)のベッドの上である。
時計の針は朝の5時を回ろうとしていた。
その後の説明では、今回受けたカテーテル治療では、心臓の左回旋枝に狭窄が見つかった部分に、血流を回復するためのステントと呼ばれる網目状の金属製の筒を置き、血管を広げる治療を施したとのこと、5日程度で退院できるとのことだった。
ところが、である。
CCUに入室後2日目位から、夜中になると咳が止まらなくなり、肺に水が溜まる肺炎と心不全を併発してしまったのである。
この合併により酸素化が保てなくなり、心臓の負荷を軽減するため気管内に管を入れて人工呼吸器を装着するという事態に発展してしまった。当初、この治療はかなり難渋したらしく、長引けば気管切開もしなくてはならない状況だったらしい。
後日奥方も「正直とても危険な状態だ」とドクターから聞かされ、かなり動揺したと話していた(心配かけたな~)。
その後、優秀な専門医をはじめ病院の皆さんのご努力により、徐々に治療が奏功し、数日後には症状が安定して人工呼吸器を離脱できたのである。
しかし、それで終わりではなかった。再び経過中に、今度は心電図に心房細動という不整脈が見られ、しばらく経っても治らないため、電気ショックを受けて事なきを得た。まさに、死の淵からの生還を体験したのである。
CCUにいる間、会社の役員、親戚、友人ら大勢の人が見舞いに来てくれたらしいが、そのときは麻酔が効いていて意識がなく、まったく気が付くことができなかった。寝ている私に何度か声を掛けてくれたが無反応だったそうである。
CCUで完全に意識が目覚めたのは、それから何日か経ってからのことだ。喉がガラガラで何杯もの水を飲んだ記憶がある。このときの冷えた水の美味しさは今でも忘れられない。
小水は入院直後から尿管に入れられている管から垂れ流し状態である。
また、病院での初めての朝食は小さなパン、牛乳パック、野菜サラダとフルーツが3~4切れ、これを食べたとき大粒の涙が溢れてきた。
なぜ泣いたのか未だにその理由はわからない。おそらく生き返ったのを感じたのだろう。そのときの朝食は、いつもの朝食とは比べられないほど中身も量も質素であったが、しかし本当に美味しい朝食だった。
ところが食事をしたときにわかったことだが、何故か右手の親指と人差し指が麻痺して箸が上手く使えないのである。今は回復したがパジャマのボタンもうまく掛けられないし歯も上手く磨けない。あげくの果てはスマホもうまく使えないのである。
どうしてしまったのか? 当時、会社や家族などへ連絡もできないため若い看護師さんにお願いして、私が口にした文章をそのままスマホで入力してもらいメールを送った。このメールを読んで会社の連中が大変喜んだそうだ。
今回の入院で、私を最も悩ましたのは、硬いベッドのせいで毎晩なかなか寝付けなかったことと、四六時中私の腕に刺さっていた点滴である。食事をするにも、顔や頭を洗うにも、そしてトイレへ行くにも常に点滴とつながれ、ベッドを離れる際は必ず点滴スタンドを持ち運ばなくてはならなかった。
これは経験してみないとその悩ましさはわからないかも知れない。また、3週間近くもベッドに横になっていると、特に、足腰などの筋力が著しく低下し一人で歩けない状況に陥る。
後で自分のふくらはぎや太ももの筋肉を見てビックリしてしまった。何と、足全体が以前のサイズと比べて一回り細くなってしまった。失礼な言い方かも知れないが、ちょうどお年寄りに見られる二の腕のたるみのような、筋肉がほとんど失われて皮と脂肪しかない「ピロピロ」状態になってしまったのである。
一人ではまったく歩けず、また歩くこと自体も禁止されていた。トイレへ行く際はわざわざ看護師さんを呼んで、二人がかりでトイレに連れていってもらう何日かだった。
退院後、自宅や病院でリハビリを行い、少しずつ筋力も戻った。やっと2週間前から会社にも来られたし、心配していたこのコラムも書けるようになった。皆様ご心配をおかけしました。
今回、つくづく思ったことは、やはりこうした状況を迎えないため、日頃からの運動や食事などの生活習慣には十分気を付けなくてはならないことである。
これは簡単そうで結構難しい。私は今、塩分や糖分をかなり控えた食事を心掛けている。昼食は減塩を施した何十年ぶりのお弁当を持参するようになった。また、スーパーやレストランに行けば、必ず目に留まるのが、「塩分XXX%」とか「減塩」「糖分」という表記である。お寿司を食べに行くときも、ネットで購入した塩分ゼロのスプレー式醤油を携帯するほどである。
今日、我々日本人の3大成人病といえば、「がん」「心臓疾患」「脳血管疾患」である。これらの多くは生活習慣病が特に係わっているとのことである。
このコラムを読んでいただいている皆様には、こうした病気にかからないよう毎日を意識して、そして楽しく過ごしていただければと思っています。
株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介
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