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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第49回 美味しさは愛情の証 2017年11月15日配信
最近、奥方に作ってもらったお弁当を持参するようになった。
40年前、新婚のころ作ってもらって以来のことである。
新婚とはどれくらいの期間を指すのだろうか? ……たぶん1か月くらいはお弁当を持って来ていたが、だんだんと私のランチはお決まりのラーメンやどんぶり物などの外食へと移り変わっていった。
それが40年経った今、再び会社にお弁当を持って来るようになったのは、2か月前に発症した急性の心筋梗塞が発端になっている(詳しくは、前回のコラムをご参照ください)。
この急病は先進医療のお陰で事なきを得たが、ドクターから、原因は塩分の摂り過ぎや高コレステロール、それと運動不足などであろうと説明があった。今後は毎日の食事にもっと気を遣うよう強くご指導をいただいた。
また、退院の際にも、「高橋さん!! 今度、またこの病気で担ぎ込まれたらもう次はないよ!」と、ドクターからかなり強く脅かされてしまった(怖い!)。
そんなこともあり、後日、奥方と一緒に初めての栄養指導を受けた。
指導の結果、自宅での朝食と夕食の栄養バランスを良くするのはもちろんのこと、塩分やコレステロールの摂取量が甘くなるお昼の外食を止め、カロリーを大幅にコントロールした奥方の手作り弁当へ切り換えることになったのである。
お陰で、今では少々味付けは薄いものの、野菜や魚が中心のこれまで食したことがない美味しいお弁当をいただいている。
さて、お弁当にしろ、給食にしろ、私は料理する側の情熱や気持ちがこもってさえいれば、どんなおかずや献立でも美味しく食べられると思っている。
長い人生の中で、これまで一番美味しかったと思えた昼食は、中学時代に食べた温かい給食であろう。生徒も先生も一緒に、「わいわい、がやがや」クラス全員で過ごしたお昼時間は本当に楽しかった。
この給食は校内ですべて栄養士が作っていた。給食を配るのはクラスごとに生徒自身であり、毎日交代制で配給していた。
主食はコッペパンで、脱脂粉乳のミルクが付き、副食はマカロニシチュー、カレーシチュー、クジラの竜田揚げ、野菜炒めなどが多かった記憶がある。お米は一度も出たことがない。
たまに大人気の揚げパンが出るとクラスは大騒ぎだった。ご存知の方も多いと思うが、脱脂粉乳ミルクとは飲むと口の周りに豆乳のような膜がベタっと付く匂いの強い例のミルクである。このミルクは美味しくないという人もいたが、私はまずいと思ったことは一度もない。
当時の噂話だが、このミルクは米国から払い下げられた家畜用の食材を日本が格安で購入して学校給食に活用したということらしい。事実かどうかは定かではないが。
一時、クラスの中で面白い食べ方がブームになった。それはコッペパンの真ん中をくり抜き、そこにおかずやシチューなどを詰め込んで食べるのである。
今ならパンシチューやカレーパンであろうか?
これが結構美味しくて楽しかった。先生も同じようにやっていた。
私は給食を一度も残したことはなかった。他の生徒も皆同じで、常に完食である。この時代、どの家庭も生活が貧しく、食料にこと足りていなかったので、子供たちはいつも腹を空かし給食を残すことなど到底考えられなかったからである。自宅やコンビニで、いつでもなんでも食べられる今の時代とはまったく事情が異なっていた。
ところが最近、テレビや新聞で、横浜にある町立中学校の給食の大量食べ残しや異物混入事件が大きく報道された。
テレビ画面にずらーっと写し出された食べ残しのお弁当を見て、私自身も実に「まずそう」な印象を受けた。容器も昔の仕出し屋さんが使っていたような古めかしい茶色の弁当箱。もし私が責任者なら、少しでも美味しそうに見える白地の陶器かアルミ容器に取り換えたり、別々の容器に小分けして出すぐらいの工夫はすると思う。また汁物ぐらいは別の容器で温かいものを提供するだろう。
予算が少なく人任せだと、たぶん、そこまで考えつかないのかも知れないが。
報道によると、大量に食べ残された理由は「冷えていて美味しくない」「味が薄い」というものである。
しかしお弁当は、冷えていても美味しく調理されていれば旨いと思うのだが。今、私が会社で食べる奥方の弁当も温かくないし、コンビニの弁当だって冷えているが、味付けがよく、彩り良く盛り付けられていれば決してまずいとは思えない。
2か月前、私は入院しており、3週間もの間朝昼晩と病院食を食べた。
それは、それは、極端に薄い味付けだったが、毎日美味しく食べられた。いつも腹を空かしていたせいか知れないが、出汁が上手に使われ、丁寧に作ってくれたのがわかる内容だった。
さて、この食べ残し事件が起こる前に、大体、先生やPTA、教育委員会の方々が、生徒たちと一緒に、一度でも同じお弁当を食べたことはあるのだろうか? もし共有していたなら、事前に生徒たちからクレームや不満なども聞けたはずである。
まずい弁当なら別の業者になぜ変えようとしなかったのか? どんなビジネスにも競争は付きものである。もし競争がないなら、今回のような結果をもたらすのは当然のことではないか? 長い間この問題を放置してきた学校や教育委員会と業者との妙な癒着のようなことを疑ってしまうのは私だけだろうか?
今、教育現場では「食育」を大々的に謳っているが、本当に当事者意識となって、また生徒たちの身になってそれを実践したいと思っているのか、どうも掛け声だけではないかと思ってしまう。
お弁当や給食は、それを作る側に深い愛情や情熱があれば、いくらでも美味しく提供できると思うのだが……。
株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介
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