【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第50回 調剤薬局ほど素敵な商売はない 2017年12月20日配信

今年の7月に心臓カテーテル治療を受けてから早4か月が過ぎた。
今は術後の検診のため毎月1度大学病院に通っている。幸いにして今のところ経過は順調だ。

検診を終えると、次回の来院までに飲む薬の処方せんを貰い、会計を終え調剤薬局に向かう。私の場合、1日に15錠の薬を飲んでいる。大量である。薬代もバカにならない。血液をサラサラにする薬、高血圧やコレステロールを抑える薬などである。

調剤薬局は病院の近くにある馴染みのところと決めている。すぐ横にも、6、7軒同じようなお店がずら~っと並んでいる。どこも一目で調剤薬局とわかる「処方せん受付け」の看板は出しているが、私はいつも無料の冷たい青汁が飲めて、比較的お客さんが少ないこのお店と決めている。

店のドアを開くと、最初にお決まりの「お薬手帳はお持ちですか?」と尋ねてくる。もちろん持っていれば渡すが、大抵の場合忘れてしまう。

待つこと10分、薬の準備ができると薬剤師らしきユニフォームを着た職員が、今度は、「体調はいかがですか?」とか「お薬はいつもと同じですね?」などと、愛想よく毎度同じような口調で質問してくる。何のために聞くのかはわからないが、ちょっとしたリップサービスのつもりでやっているのだろうと思っていた。

しかし、どうやらそれは私の思い過ごしということが今頃になってわかってきた。

最近読んだ東洋経済によると、こうした調剤薬局の役割は、今、大きな転換期を迎えているとのことだ。

現在、全国にある薬局数は5万8000店。病院やクリニックと違ってお店をオープンするための特別な認可もなく、店舗数は毎年右肩上がりに増えているとのこと。今やコンビニの店舗の5万4000店を超え、ガソリンスタンドの3万2000店や郵便局の2万4000店舗を抜いて、インフラのように巨大な市場を築きつつある。

そういえばこの数年、会社の近くにある大きな病院の周りにも、これでもかという数の調剤薬局ができた。

こうしたコンビニの件数をも上回る乱立した中で、本当にビジネスとして潰れずにやっていけるか以前から疑問だったが、今回やっとそのカラクリらしきものがわかってきた。

日本では、これまで伸び続ける医療費をどのように抑制して行くかが大きな問題だった。いわゆる薬漬け医療を減らすための国策として、薬の処方は医師が担当し、調剤は薬剤師が受け持つという「医療分業」を作ったのだ。

これにより病院が院外処方せんを発行するので、それを目当てに周辺に多くの調剤薬局(門前薬局)が乱立する図式ができた。つまりは病院の近くにお店を置くだけで、病院から処方せんを持った患者が、エスカレーター式に次から次へと薬を貰いに来てくれるという訳だ。

在庫も病院に合わせて最小限でいいし、保険収入なので取りっぱぐれはなくリスクも少ない。特別なサービスや広告などは不要、また顧客開拓などもせずとも自動的にお客さんが来てくれるという、とても簡単で儲かる、そしてお上から推薦をいただいた本当にありがたいビジネスモデルができているからである。

まさに、“こんな素敵な商売はない”。

東洋経済によれば、例えば糖尿病や高血圧で28日分の薬代が処方された場合だと、薬剤費を除いた投薬費用は3割の自己負担分だけでも、病院で薬を貰った場合なら420円で済むところ、調剤薬局では1820円となり、4倍以上にも跳ね上がってしまう。

こうした医療費の増加は、薬剤師の高い人件費やお店の安定的な運営など、院外処方を活性化させるためには必要なのだろう。しかし、その結果、患者のメリットより薬局側の利益が優先され、今や、患者負担が大幅に増えてしまった。

ここ数年の調剤医療費は、2001年度が3.3兆円、2016年度は7.4兆円と2倍超に増えた。こうなった大きな原因が、まさにこれまで政府が勧めていた「医療分業」であり、薬局も製薬メーカーも、このビジネスモデルに乗ってしっかりと漁夫の利を得てきた。

現在、薬局の報酬となる技術料は、調剤医療費全体の7.4兆円のうちの1.8兆円とのこと。この内訳は、処方せん受付けの1回ごとに算定される「調剤基本料」、処方する医薬品の錠数などに含まれる「調剤料」、そして服薬指導などの「薬学管理料」で構成される。

しかし、その実態は、ある薬剤師によると「調剤基本料」は単なるお店への入場料であるとのこと。本当にビックリ!!だ。

新宿や池袋辺りの繁華街でよくニュースになる、お店に入って座っただけでチャージ料を取られるボッタクリとどこが違うのか? と思ってしまう。「調剤料」も、医師が処方した記載通りの作業をすればいいだけとのこと。平たく言えば棚に並んでいる薬を棚から下ろして袋詰めするだけの単純作業なのだ。最低でも薬が間違っていないかどうか突き合わせだけはしていると思うが、どうだろうか?

そして服薬指導が必要な「薬剤管理料」といえばマニュアル通りに話せばいいだけ、とのことである。これで、なぜ薬局に行くと若い職員が、医師と同じような質問をしてくるのか、理解できた。きっと彼らはお客さんと一応話さなければならないのだ。

しかし、そうなると誰がやっても同じ作業となってしまい、薬学部で学んだ専門性は活かされるのだろうか?

これまで政府が進めてきた「医療分業」は、本来、処方される薬が正しいかを医師と薬剤師の双方がチェックすることで、安全性が担保されるはずだった。しかし、医師と薬剤師の双方が互いに検証し合うなどということも絵に描いた餅であり、「医療分業」の精神から、現実としては、まったく機能していない。

さらに驚いたことに、2016年の4月からはお薬手帳を持参しないと医療費が高くなってしまうとのこと。しかし、調剤薬局に行っても、手帳を持っているかどうかは尋ねてくるが、持参したかどうかで医療費が高くなることなどは一切教えてくれない。

これからは必ず持って行こう!!

今、病院に行くと待合室には大勢のお年寄りがいるが、彼らは処方せんを貰って調剤薬局に行くとき、こうした実体があることをご存知なのだろうか?

なけなしの貯蓄や年金から医療費や薬代を工面していると思うと、何ともやり切れない。たぶん政府もすでにこの問題については動き出しているだろうが、加えてマスメディアももっと、こうした事実を報道してほしい。

皆さん、病気にならないようにしましょう。そして、お薬手帳もお忘れなく!

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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