【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第57回 銀行員の憂鬱 2018年7月18日配信

梅雨が明け、暑い日が続いていますね。

さて、1か月ほど前だっただろうか?
週刊『東洋経済』で読んだ「銀行員の不安」はとても興味深い内容だった。
長年、エリートの象徴と言われてきた銀行で、今その成長に陰りが見え始めているというのである。

この特集では「みずほ1.9万人削減の次」というサブタイトルが付けられ、業界二番手のみずほ銀行が大きく取り上げられていた。儲けられなくなった本業、急増する転職者、銀行員が一生安泰でなくなった深刻な背景など、こうしたキャッチが、今彼らの周辺を飾る。

本業収益の先細りや相次ぐ人員と店舗の削減計画などで、ここ5年ほど銀行員の転職が急増。これまで一生安泰と思われてきた「出世すごろく」の構図が崩れてしまった。

特にメガバンクの中でも象徴的なのがみずほ銀行で、昨年秋、全従業員の1/4にあたる19,000人もの削減を打ち出したのはまだ耳新しい。今年5月の決算は純利益が5,700億円で、対抗馬の三菱UFJの9,800億円に比べるとだいぶ水をあけられているが、他の企業に比べるとまったく見劣りしない。

しかしこの削減計画は、三菱UFJの6,000人、三井住友の1,000人に比べるとかなり大規模である。今回は従来のような割増金を払って希望退職を募るいわゆるリストラではなく、雇用と退職を調整し、段階的に3~10年ほどかけて過剰な人員を削減する雇用調整である。

銀行業界はすでに成熟産業化しているため、今経営者の目は低成長でも稼げるコスト構造作りに向いているとのこと。

ご存知のように、銀行といえばかつてはエリートの象徴だった(私自身は現在でもそう思っている)。優秀な大学生は、銀行、商社、コンサルタント会社へ行くというのが世間の常識だった。就職情報サイトのマイナビが毎年発表している「大学生就職企業人気ランキング」でも、長年、メガバンク3行が文系総合ランキングトップ10の常連組である。しかし、今年は三菱UFJだけ圏内で、他の2行は共にトップ10から姿を消してしまった。

今銀行業界は、「過当競争」「カネ余り」「フィンテック」など、これまで前例がない競争に巻き込まれている。

銀行間の過当競争と言えば、確かに都内や通勤圏の最寄り駅周辺には至るところに銀行がある。ちょっと歩けば棒より銀行に当たるほどだ。

本コラムを書くにあたって、秋葉原駅(JRとつくばエクスプレス)の500メートル近辺を実際に歩いてみた。

りそな銀行は2店舗、三菱UFJ銀行は2店舗、みずほ銀行は4店舗、高知銀行は1店舗、新生銀行は1店舗で、合計10店舗。隣接するコンビニやスーパーのATMまで含めると一体何店あるのか?

秋葉原駅は乗降客が多い。こうした乗降客に支店やATMを利用してもらうには、これだけの店舗が必要なのかもしれない。しかし、それにしても多くないか。

近い将来、中国や米国のようなキャッシュレス時代を迎えたら、こうした施設はすべて無駄になってしまうかもしれないのに……。

銀行内では人の競争がし烈で、副支店長になれる人は同期の2割とのこと。支店長への昇進はもっと狭き門。まさに、どこかの国の官僚機構にも似てきている。実績を確保するためノルマもどんどん厳しくなってきているらしい。

2013年以降の日銀の金融緩和も銀行の苦境に拍車をかけている。
企業のカネ余り状態はご存知の通りであろう。

銀行が家計や企業から1,460兆円もの預金を集めたのに対して融資などの貸出し額はその半分程度だ。せっかくマイナス金利政策を敷いているにも関わらず、その思惑は外れ銀行からカネが出ていかない。結果的にマイナス金利でマイナス収益を生んでしまった。

そんな理由から、最近では有価証券などの運用にも頼り始めている。

また地方の銀行はさらに厳しく、金融庁からは、生き残りをかけ地域産業育成のため、コンサル業としてやってほしいとのお達しまで出ているとのことである。

最近、当社の担当営業にお会いしても、これまでのセールストークより最近ではコンサル業のように事業承継やM&A、相続、保険、投信などの話しが多くなっている。

仮想通貨やブロックチェーン、AIを武器とするフィンテック企業も出てきた。

覚えているだろうか? 4、5年前、国内でフィンテックが騒がれ始めたとき、真っ先に言われたのが銀行不要論である。

米国のアマゾンやグーグルも金融業に進出し始めた。

今や銀行だからといって金融界を牛耳れる時代は終わった。インターネット専用銀行や、店舗やATMを持たないネット銀行も続々現れている。通帳の発行を有料化したり中には通帳すら発行しない銀行も出てくるようである。

Webに目をやれば、「今やネット銀行なら、メガバンクの金利10倍、20倍は当たり前!」と、昔どこかのCMで聞いたようなキャッチフレーズで煽る企業まで出てくる始末。金利や手数料などの比較サイトも現れてきた。

こうした状況の中、当社では、金融業向けクラウドサービス「RemoteOperator」の販売が活発になってきた。特にメガバンクをはじめ地銀や信金、生損保、証券などでの採用が目立つ。

このサービスは、インターネットバンキング利用者の増加を背景に減少傾向にあった店舗来訪の代わりに、ネットを使い非対面で接客できる日本初のサービスである。顧客はパソコンやスマホから電話と画面を使って対面と同じサービスを受けることができる。このため銀行のオペレーターも、コストからプロフィットが出せるサポートセンターへと働き方が変わり始めている。

世の中は目まぐるしく変化している。

今、安泰だと思われている企業や職業も10年、20年、30年経ったとき本当に安泰でいられるか? 我々も油断していれば、直ちに衰退の憂き目を見てしまうというのは、考え過ぎだろうか!

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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