【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第68回 「おしん」に泣いた! 2019年6月19日配信

先週末、テレビのBSで「おしん」を観た。それも6時間連続である。
NHK朝の連続テレビ小説の11週分を3回に分けて再放送した2回目である。

奥方と夜の11時半ごろから何となく観始めた。ストーリーはおしんが奉公に出た途中からだったが、時間を忘れすっかり引き込まれてしまった。

二人でテレビの前に釘付けとなり、ハラハラ、どきどき、泣いたり、笑ったりしながら夜を明かした。

観終わった時刻はなんと翌朝5時半過ぎ、その朝は興奮してなかなか寝付くことができなかった。こんなに長時間テレビを観続けたのは生まれて初めてかも知れない。

来週はビデオにでも撮ってゆっくり観ようと思うが、また引き込まれて一気に観てしまうかも。

確か5月の日経新聞の「私の履歴書」は脚本家 橋田寿賀子だったので、「おしん」を思い出した方も多かったと思う。しかし私はその「私の履歴書」をまったく読んでおらず、今回の「おしん」との出会いは、本当に偶然だった。

調べてみると、「おしん」は1983年4月から翌84年の3月末までの1年間放送され、平均視聴率は驚異の52.6%、世界68か国や地域でも放送され、その人気ぶりから朝ドラの最高傑作と言われた。橋田寿賀子が時間をかけて構想を練りNHKに持ち込んだ「戦中・戦後をたくましく生きた女一代記」で、少女期役は小林綾子、成年期を田中裕子が演じていた。

貧困や苦労に耐えながら健気に生き抜くおしんの様子が観る人に大きな感動をもたらす。

本コラムのアシスタントに「おしん」の話をしたところ、「えー? 途中から観たんですか? あの筏(いかだ)シーンは観てないんですね! あの筏のシーンが皆を泣かす最高の場面なんですよ」とのことだった。

おしんは山形の貧しい小作人の子供として生まれ、7歳のとき口減らしのため丁稚奉公に出されることになった。その名シーンが真冬に最上川を筏で奉公に向かうところだそうだ。

それは今度ゆっくり観ることにしよう。

さて、私が観た6時間分について書こう。
ドラマはまさに波乱万丈どころでない。次から次へと苦難がおしんを襲い続ける。奉公先でのいじめ、空腹、極寒、両親に会いたい、学校に行きたいなど……。

その中で特に、印象に残ったところを3つご紹介したい。

(1)
おしんの奉公先となる米問屋の大奥様役(おばあちゃん)長岡輝子の名演技が特に印象に残った。少々「ズーズー弁」でぶっきらぼう、真っすぐな性格、正にあの時代を生き抜いた強い女性を完璧にこなしていた。

おしんがこの米問屋に奉公に上がったときは厳しくあたっていたが、ある事故があったときに、おしんが孫娘を助けたことから徐々に気持ちも変わり始めた。

また、子供ながらも真っすぐなおしんの健気な働きぶりを観ているうちに、自分の孫娘と同じように可愛がり始め、正月には孫娘とお揃いの着物を着せたり、孫娘と一緒にそろばんを教えたりして、おしんを一人前の商売人に育てていった。

それまでわがままで意地悪だった孫娘までも、実の姉妹のようにおしんを慕い仲良くなっていくのである。大奥様は、おしんを通して孫娘を育ていくという教育方針を貫いた。

私にとっては、ここが一番興味深く面白かったシーンである。

(2)
おしんの姉が、働き先の繊維工場で結核に倒れ、小作人である実家に戻されて養生しようとするシーン。当時、結核は不治の病だったため、家族は感染を恐れ同じ家の中で暮らすことを拒否し、結局、姉は母屋とは別の小さな納屋の床の上で一人寒さに耐えながら、死を待つという、なんとも悲しくて切ないシーンである。

そんなとき、お見合い先でトラブルを起こして、自ら加賀屋を辞め実家に帰ってきたおしん。懸命に姉を看病したが、間もなく結核が悪化して帰らない人に。

このとき、おしんがつぶやいた言葉に私は泣きそうになってしまった。

『なんで小作人はこんなに一生懸命米を作っても、いつも貧乏なのか? 自分が奉公に行っている加賀屋は、一俵も米を作っていないのに、いつも裕福なのはどうして? きっと全部、小作人-米屋の制度が悪いんだ。私は大人になっても決して米は作らない。商売人になるんだ』と。

ここはとても印象的で、このときの辛い思いが、大人になってスーパーで商売する基礎になったのではないだろうか。

(3)
何と言っても、おしんの少女時代を演じた小林綾子の演技が光った。

子役ながら、あの朴訥(ぼくとつ)とした難しい方言を流ちょうに話し、おしんになりきって演じたのは、まさに天才子役である。子供ながら繰り返し繰り返し相当練習したのではないかと思われる。

最近、私は、池波正太郎の時代劇「剣客商売」を、BSでちょくちょく観ているが、主演の今は亡き藤田まこと演じる秋山小兵衛の3回り離れた恋女房として、小林綾子が演じているおはる役もなかなか味があっていい。

今回のコラムは何だかまとまりのない内容になってしまった。

しかし、私の母も大正生まれ、きっとこういう時代を過ごしたのだろうなと、しみじみと母を思い出し、そして時間をかけて一年分のビデオを先頭からゆっくり観たいと奥方と話しているところだ。

二人の「おしん」ブームはこれからもまだまだ続く……。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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