【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第70回 あなたならどうする~♪ 2019年8月21日配信

私と同じ団塊の世代なら、この曲を覚えているのでは?
そう、70年代にいしだあゆみで大ヒットした『あなたらどうする』のタイトルである。

当時、私は彼女が大好きで、特に『ブルー・ライト・ヨコハマ』のレコードは擦り切れるほど聴いたものだ。

さて、今日は8月の半ば、あと1か月半もすると消費税法が改正される予定だ。
新聞やテレビでもかなり騒がれているので知らない方はいないだろう。

今回の改正では、商品の購入方法や同じ食品でも原材料の違いなどにより税率が異なってくる軽減税率という特例が設けられているのだが、これの解釈をめぐって、今まさに『あなたならどうする~♪』の旋風が巻き起こっている。

軽減税率というからには消費税が軽くなるように見えるので、我々消費者にとってはウェルカムである。しかしこの制度、実は販売側・消費者側の双方にとって途方もなく面倒くさい。

例えば、たまに無性に食べたくなるマクドナルドの「ビッグマック」。イートインなら消費税は10%で、テイクアウトなら8%。同じハンバーガーなのになんで値段が違うのか?

“納得がいかない”と、思われる方も多いのではないか。

私はこの新制度にケチをつけるつもりはない。しかし、内容があまりにもわかりづらいのである。そこに不満がある。

お店で働く店員さんだってお客への意思表示の確認がとても大変そうにみえる。私がお客の立場だったとしても面倒くさそうだ。どこで食べようがお客の自由なのだから。

テイクアウトの意思表示をしたのに店内で食べる人が絶対出てくると思う。
“ドキッ”としたあなた、気持ちはわかりますがそんなトリッキーなことを考えてはいけません。しかし、たかが2%、されど2%なのである。

皆さん、小学校で習った、国民の三大義務を覚えていますか?
「勤労の義務」「教育の義務」「納税の義務」。

今回の消費税も、我々に与えられた三大義務のうちの「納税の義務」にあたる。なので、うそをついては駄目です、とは思ってもなかなか納得がいかない。

最近、奥方に代わりよくスーパーへ買い物に行くが、例えばみりんを購入する場合、本当のみりんなら消費税は10%で、みりん風調味料ならば8%、どうして違うのか? どちらも調味料と思うのだが。

ネットで調べると、みりんは酒税も取られている立派なお酒なので消費税は10%。その横で売られているみりん風調味料は飲食料品なので8%というわけだ。しかし、みりんをお酒だと思って買っている人はどれだけいるか?

居酒屋で、「みりんを冷やで一杯!」と、そんなやつはどこにもいない。ハンバーガーにしても、みりんにしても、どうもお役人の決めることはよくわからない。これは消費税だけに限ったことでもないが……。

で、このまま10月1日を迎え消費税法が改正されると、日本中至るところで、『あなたならどうする~♪』のトラブルが発生するのではと。

想像しただけでも本当に厄介である。

今回の消費税の問題、新聞やニュースでの話だと思っていたら、もっと身近にもあった。そう、なんと我が社でも起きていたのだ……。

ご存知のように、当社はソフトウェアを開発・販売している。ハンバーガーもみりんも販売していない。それなのになぜ?

うちの会社の経理担当者が眉間にしわを寄せて悩んでいた。よく見ると、何か難しそうなものを読んでいる。国税庁が出している消費税のQ&Aを読んで頭を抱えているのである。

話を聞いてみると、この10月に改正される消費税率のことが書いてあるのだが、どうも読む人によって解釈が違うらしい。文章があまりにも曖昧で、また解釈も難解でどう対応したらいいのか悩んでいる。彼曰く専門家でも見解が分かれるとのこと。

ふびんに思い、Q&Aをちょっと見せてもらうと、確かにこれはわかりづらい。この本を見る限り、視点の当て方によっては8%、10%のどちらにも振り分けることができる。

どうやら当社の場合は、サポート契約が消費税の税率の問題に引っかかってくるらしい。契約終了日の税率が適用される? お客さまに追加請求が発生する? とか言っていたが、私は税金の専門家ではないので詳しいことはわからない。

プログラムのフローチャートのように「Yes」「No」で進んで、スパッと答えを導き出してくれれば簡単なのだが。

この軽減税率、ヨーロッパのEU諸国ではもう50年も前から導入していて、この制度を導入する・しないかは各国が自由に選択できるらしい。しかし、軽減税率は多くの問題点が指摘されていて、後からEUに加盟する国はそれを知っているので導入を見送る国が多いとのこと。

その結果、EU加盟国全体での軽減税率導入国の比率は、なんと50%ずつだそうである。特にドイツやイギリスなど最初に導入した国々で問題が頻発し、「導入をやめて低所得者対策をした方が良いのでは」、という考えが多くを占めるようになっている。

こうした欠陥がありそうな軽減税率を今更始めようとしている我が国では、本当に勝算があるのか心配である。

ついでにお国のお偉い方々にもう一つお聞きしたい。
消費税率は、3%、5%、8%、そしてとうとう二桁まで突入して10%まできた。「次は何%まで行くのか?」と。

消費税が1%上がると税収は2兆円上がるとも言われている。今回2%上がると4兆円、とてつもない金額だ。増税で新たに得た財源は全世代型の社会保障のために使われると言われているが、全世代型の社会保障って一体何を指しているのかよくわからない。

年金、医療、介護といった主に高齢者向けの制度だったものが、いつの間にか子育てが加わり、全世代型に代わり、そして少子化対策にも使われるようになった。我々が、汗水たらして稼いだお金で税金を納めているのだから有効に活用してほしい。

もっと、国民の目線に立って、納得いくわかりやすい仕事をしていただきたい。

“そう、そう忘れていた”。うちの会社にも犠牲になっているやつがいた。経理担当者だ! 税理士先生や税務署に問い合わせたり、お客様に説明に行ったり、日々奮闘中である。

彼の頭の中は、連日、8%と10%をどうするかでフル回転している。
きっと今、彼はこの『あなたならどうする~♪』をこんな風に変えてを口ずさんでいるような気がする……。


     嫌われてしまったの 国税局に
     切り上げられてしまったの?
     なけなしの2%
     私のどこがいけないの
     それとも選挙で変わったの
     残されてしまったの 厳しい世間に
     悲しみの世の中で お金が逃げる
     あなたならどうする
     あなたならどうする
     泣くの 怒るの 諦める?
     あなたなら あなたなら

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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