【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第72回 #Ku-Too 2019年10月16日配信

今日は9月20日、朝日新聞の朝刊に興味深いメッセージ広告が掲載された。
キャッチには「私たちにもフラットシューズを選ぶ自由を」とあった。

『この国で働く女性たちの中には、「女性だから」という理由でハイヒールやパンプスを履くことを期待されたり、強制されたりしている人たちがいます。性別で何かを規定すること、もうやめませんか。理不尽なルールを強いること、もうやめませんか。ヒールが好きな人はヒールを、フラットが好きな人はフラットを、足元に選択肢を。』と続く。

どうやらこの広告、「9月20日のクーツー」と「苦痛」と「靴」に語呂合わせをした#KuToo運動として出稿されたようだ。

しかもこの#KuToo、どこかで聞いたことがあるような言葉だと思っていたら、2017年、米国のハリウッド映画のプロデューサーによるセクハラ疑惑が報じられた際、同じような被害を受けた女性たちが「私も同じよ……」とツイッターのハッシュタグで呼びかけた#MeToo運動になぞられて作られた造語なのである。

広告の中には小さな文字で、この運動に賛同した561の個人名と企業名がズラッと並ぶ。中には女性に混じって男性の名前もあった。

そもそもは、ある女性がアルバイト先の葬儀場で会社からヒールが5cmから7cmの黒のパンプスを履くことを強制され、ヒールが高い靴で長時間仕事する苦痛をSNSで#KuTooのハッシュタグを付けて発信したところ、多くの女性たちの間に共感が広がった。

「なんで私たちは足を怪我しながら仕事をしなきゃいけないのか? 男性たちはぺたんこの靴なのに」などと発信。

このツイッターでは、女性のみヒール・パンプスを強要されるのは「性差別」と同じであり法規制されるべきと意見を発信したところ、女性たちに共感が広がって多くの署名を集めた。

まさにこの運動は、ネット時代を象徴する女性解放(フェミニズム)のムーブメントになったのである。

朝日新聞での広告費はクラウドファンディングで集めたそうだ。
以前では考えられないネット時代だからこそ実現できた方法であろう。

オンラインメディアのBuzzFeed Newsが、こうしたテーマで国内の主要な大手航空会社に取材したところ、各社からの回答はいずれも「身だしなみ」や「統一美」を理由に、女性スタッフへパンプスの着用を求めているとのことであった。

私はこの広告を見るまで、ヒール・パンプスは航空会社のCA(客室乗務員)やホテルなど一部の接客業で、制服の一環として指定があると想像していたが、多くの職場で女性たちがここまで苦痛を強いられているとは思いもよらなかった。

ましてファッション性の強いハイヒールならともかく、「低いヒールのパンプス」であれば我々男性の履く革靴とそう違いはないと思っていたが、今回そのヒールが問題なのだとわかった。ヒールがあるということは、つま先に体重がかかるのだ。

無知というのは恥ずかしいもので、「女性用のパンプスは痛くて、苦痛を感じている」ということが今回の運動からよくわかった。

我が社の女性社員に聞いたところ、ハイヒールの靴はかっこ良いけど辛い、さらにデザイン優先でつま先部分が狭くなっていると最悪。履き続けると外反母趾、巻き爪、あるいは酷くなると腰痛になったりするので、やはり普段はヒールのない(低い)靴やスニーカーを履きたいとのことだった。一日中立ち仕事をしている職場ならなおさらであろう。

自分自身のことで恐縮だが、30歳近くなったころ、親戚に薦められてある女性と見合いをしたことがあった(結果的には見事一回で振られてしまったが)。彼女の職業はあこがれの国際線CA(当時はスチュワーデスと呼んでいた)。

話を聞いてみると仕事はいつも飛行機の中で長時間立ちっぱなし。海外のホテルに着くと決まって就寝前はバスタブで両足を投げ出し、両足を熱湯でマッサージしていると言っていた。いくら高給を貰っていても彼女たちの足は年中激痛を伴っていると話していたことを思い出す。

そういえば、かなり昔、ニューヨークのキャリアウーマンたちが会社にスニーカーで通うことが一時ブームになったことがあるが、今はどうなっているのであろうか?

時々電車ではビジネス風の女性がスニーカーを履いているのを見かけるが……。

今回の発信で、私も含め、たくさんの人がハイヒールによる女性たちの苦しみを理解したと思う。

さて今日は、9月20日。そうだ、20日だ。
実は、毎月20日近くなってくると私の心がざわめき始める。
原因はこのコラム『ロマンとそろばん』である。
コラムは月末に完成させることになっているので、月の中ごろから書き始めないと締め切りに間に合わない。

何を書くかテーマが決まってしまえば、中身は4日間程度で書き終えることができるのだが、そのテーマがなかなか思い付かない。とにかく私にとって、今月何を書くのか、これを決めることが最重要課題となる。

しかし、なかなか決まらない。
まさに私にとって、この「テーマ」探しが、今は最大の#KuTooなのである。

そんな私の気持ちを見透かしたように、20日ごろにはコラムのアシスタントが「もう書き始めていますか?」と聞いてくる。

「テーマが決まっていないのに書けないだろう!」と思いながら、「そろそろ始めるよ」と答える……。これは本当に辛い。

しかし、今日は#KuTooの広告が私を助けてくれた。
おかげでこのコラムが書けた。

「#KuToo」さん、私の苦痛を救ってくれてありがとう。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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