【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第83回 日々新たなり 2020年9月16日配信

皆さん、「日々新たなり」という言葉をご存知でしょうか?
よく座右の銘に使われるので、一度くらいは耳にしたことがあるかもしれません。

東芝やIHIで経営の腕を振るった昭和の大経営者、土光敏夫さんの座右の銘でもある。

ネットで検索すると、「今日という日は老若男女皆平等にやってくる。そんな大事な一日を有意義に過ごそうではないか! そのためには昨日よりは今日、今日よりは明日と、日々前進することを心掛けるべきである」と説明されている。

諸説あるらしいが、中国古代の王朝を開いた「湯王」(とうおう)という聖人が使い始めた言葉と言われている。

さて、なぜ今回「日々新たなり」をテーマにしたかというと、この7月、面白いニュースが話題になったからだ。

プロ野球に興味がある方ならご存知と思うが、今期セリーグでの成績がトップと絶好調の読売ジャイアンツ。そのジャイアンツを率いる原辰徳監督が、翌日に62歳の誕生日を迎える7月21日のゲームに勝利したとき、報道陣から特大のケーキと高級ワイン「オーパス・ワン」を贈られ、「美味い!」とケーキを頬張りながら、こんな風に思いを語っていたのが印象に残った。

「それはありがたいことです。もう感謝です」。

「還暦になった時点で年というのは超越していますね。1回転した、いわば2歳だよね。10歳(70歳)ぐらいになるとまた変わるかもしれません。第1次思春期みたいなものが来るかもしれない。今はただ新鮮でいられる。仕事場があるというのは感謝すること」。

「しかし、それはもう過去だから。また新たに。日々新たなり」。

監督として通算1687勝を残した野球界の大先輩となる名将、三原脩監督の座右の銘「日々新たなり」を引用して、こう感慨深く話したのが私の心に刺さった。

70歳になったら思春期が来る??
もしそうなら、私自身も今まさに思春期真っ盛りだが……。原監督のこのインタビューから強く印象に残ったのは、「仕事場があるというのは感謝すること」というフレーズである。

団塊世代でもまだ仕事を続けている自分を振り返りながら、「原監督が話していた『仕事場』とは何だろう?」を今回改めて考えてみた。

大学を卒業し1980年にドラフト1位で読売ジャイアンツへ入団。ミスタージャイアンツこと長嶋、世界のホームラン王の王貞治が現役を離れた後に、ジャイアンツを背負うスター選手として大活躍したのはご存知であろう。

入団1年目からホームラン22本を打ち新人王に、3年目には打点王を獲得して最優秀選手にも選ばれている。そして37歳のとき引退試合で通算382号となるホームランを放ち、現役生活にピリオドを打った。

その後、原監督はジャイアンツの監督に3度就任している。つまり監督を2度も辞めたということだ。

1度目の辞任は、球団オーナーナベツネとの確執が原因だった。2度目のときは優勝を果たし3連覇も成し遂げたが、またもや球団と対立して退任してしまった。

「誰が監督でも勝てる。優勝すれば続投だが、今は代わりがいないから(原監督でも)仕方がない」と散々嫌味を言われ、さらに自身のスキャンダルも公になってしまいユニフォームを脱いだ。

しかし、私は日本の野球界で彼ほどの偉業を成し遂げた監督は数えるほどいないと思っている。

2002年から長嶋監督の後を継いでジャイアンツの監督に就任、最初のシーズンでチームを日本一に導くという華々しいデビューを飾った。

2度目の監督に就任した後は、2期合わせて通算7回のリーグ優勝、3度目の日本一を果たす大記録まで達成している。2018年には日本の野球界の発展に功績を残した人をたたえる殿堂入りも果たした。

そして、3度目の今、今期セリーグでの成績がトップという状況にある。そうした中で62歳の誕生日を迎えて多くの人々から祝福を受けながら、一時、天職とも言える野球から離れたことの悔しさのようなものが蘇ってきたのかも知れない。

自分は野球という現場があってこそ自分を見出すことができる、ということを改めて痛感したのであろう。そんなところからインタビューで語った「仕事場があるというのは感謝すること」という言葉にひしひしと重みが感じられた。

経営者だろうが、ベテランだろうが、新入社員だろうが、そんなことは無関係である。職業や役職が変わっても「仕事場」には変わりはないはず。

最近はコロナ禍の影響もあり、「仕事場=オフィス」というこれまでの概念がことごとく崩れ、テレワークという新しい働き方が定着してきている。

私自身もご多分に漏れず、数か月前から週に何日かテレワークで在宅勤務を始めた。おかげで満員電車に揺られることも少なくなったし、出張や会議なども少なくなり仕事は楽になった。

半面、起床してから夕方まで自宅で一日中パソコンと向き合い、打ち合わせはチャットやビデオ会議、資料の作成、情報の検索などを繰り返して一日の仕事を終える。

快適に仕事はできるのだが、今一つ何か満足感や達成感というものが得られない。これが最近流行りの働き方改革かも知れないが、本当にこのままの状態を続けていいのかちょっと心配である。

仲間と直接顔を合わせる回数も少なくなったし、今のままいけば徐々に働く意欲や新鮮みもなくなり、感謝の気持ちすらも薄らいでくるのではないだろうか。

私自身の座右の銘でもある「初心忘るべからず」を忘れて、惰性で仕事をしてはまずいのである。

以前、当社を退職した社員が復職してきたことがあった。どうして戻ってきたか聞くと、会社を離れてみると職場への感謝の気持ちや日々の努力の大切さが改めてわかったという。

誰もが平等に時間が与えられて生活している。しかし、ふと気が付くと、初心を忘れダラダラと惰性で仕事をしているときもある。努力してもすぐに結果が出ることなんてない。

それでも、辛いことや苦しいことが立派な糧となることを信じて「日々新たなり」である。

皆さん、初心に戻って、毎日コツコツと努力を積み重ねて日々前に進んでいこうではありませんか!

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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