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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第91回 週休3日制 2021年5月19日配信
今、政府では「選択的週休3日制」の議論が始まったらしい。新聞やテレビで取り上げられている。今日はこのことを書きたい。
まずは私の意見を言わせてもらおう。
「そんなことは、我々企業に決めさせてくれ」。
「週休3日制」とは、その名前の通り1週間あたりの休日を3日にする制度のこと。つまり1週間に4日働いて3日休むということである。
毎日発生する仕事量は変わらないので、「週休2日制」の会社であれば、週5日勤務で消化する仕事を週4日でこなすことになる。
休みが増えれば仕事と育児や介護などが両立しやすくなり、メリットが生まれそうだ。
しかし、コロナ禍で日本の経済がシュリンクしている今、これって本当に急いで議論すべきことなのか? これこそ不要不急ではないか?
学情が運営する20代専門転職サイト「Re就活」の「週休3日制」に関する調査結果によると、今もらっている給与が変わらなければ歓迎すると答えた人が70%、また給与が減っても利用したいと答えた人は20%で、9割の人が概ね「週休3日制」に前向きである。
賛成と答えた人からは、増えた休日を「趣味や自分の時間に使いたい」「資格取得の勉強や副業ができる」「親の介護にあてられる」「育児や家庭サービスに使えそう」との声が挙がった。
ま~、休日が増えて収入が減らないならこれは大方の人が賛成であろう。
一方で「給与やボーナスが減るなら利用したくない」「将来的に考えてもいいが、若いうちは仕事を憶えてスキルを習得することが先なので、当面は積極的に利用したくない」という慎重な声もある。
私はこの考えに大賛成だ。早く仕事を憶えて活躍してほしい。
さらにもっと重大なことがある。それは現在企業や業種などによっては「週休2日制」すら浸透していないところがあるのだ。
日本経済新聞によると、2020年時点で「完全週休2日制」を設けている国内企業は44.9%に留まっているとのこと。そんなところからも私には「週休3日制」への移行は、まだハードルが高いように思われる。
つい最近、大学の教授がテレビでこんな話をしていた。もし給料が2割程度の落ち込みで済むなら、堂々と副業ができるので「週休3日制」に賛成したい人は多いのではと。
また定年後のセカンドキャリアの先取りができるというメリットも生まれる。会社にいるうちに副業を通して様々な経験を積んでおけば、定年後どこに住んでも働けるというものだ。
反対にデメリットは、就業規則などにもよるが働く時間が短くなれば、給与カットの恐れがあることだ。
また、副業を行う人が増えることによってフリーランスの仕事を奪うことにもなりかねない。フリーランスへ外注するより副業の人に任せるほうがコストパフォーマンスは上がると思う企業も出てくるだろう。
今、政府・与党で議論されているのはリモートワークなどを活用する新しい働き方である。その中に、現在の「週休2日制」を維持しつつ、希望者には「週休3日制」が選択できるというものが含まれている。
しかし、これはよく政治家に見かけるスタンドプレーではないだろうか?
緊急事態宣言が出されている今でも、在宅や時差出勤あるいはリモートワークができない職種がどのくらいあるか、ご存知ないはずはないと思う。感染拡大で経済がこれだけ逼迫しているとき、国民や企業の足をさらに引っ張るような政策は絶対に避けてほしい。
しかし、参考にしたい良いケースもある。海外や日本の一部の企業では「週休3日制」を導入しているところがあるのだ。
例えば、求人広告や人材派遣大手のリクルートでは、年間休日を130日から145日へと増やして週休を3日とし、所定労働時間(1日あたり)を7.5時間から8時間に増やしている。
こうしたやり方であれば、年間の労働時間は変化せず給与も変わらない。
海外でも「週休3日制」を導入する試みが広がっている。ニュージーランドでは、新型コロナウイルスで影響を受けた国内観光の再興のため、アーダーン首相が「週休3日制」を導入し試験運用を始めた。スペインでは、政府が週4日労働の全国的な試験導入を検討。ドイツでも労働組合が週4日労働を提案している。グローバルでもこうした「週休3日制」へのシフトが進んでいる。
この制度を活用し我々IT業界で「週休3日制」を導入したらどうなるか簡単に想像してみた。
全体の仕事量は変わらないので、労働日が1日減れば、誰かがその分を引き受けなければならない。新たに社員を雇用したり、残業を増やしたりしてカバーするためのコスト増もでてくるであろう。
さらに、我々の業種で休日を活用して「副業」をやる人がいるとすれば、真っ先にプログラム開発などのアルバイトが頭に浮かぶ。
しかしこうした場合、副業先が競合会社や関連会社になるとノウハウなどが他社に流れるリスクも考えられる。
一般にソフト開発は納期が間に合わずぎりぎりになることが多い。そうなれば副業でオーバーワークが強いられ時間外や徹夜でカバーしないと追いつけないシーンも出てくる。納期に間に合わなければ残業で取り戻すこともできるが、それが増えると通常の業務に支障が出ることもあり得る。
また特定の部署で「週休3日制」を選ぶ社員が多くなれば、会社全体の組織運営に支障が生じることも考えられるだろう。
とにかく、たとえメリットがたくさんあっても、また選択制であっても「週休3日制」の導入を企業や労働者の同意なしに義務付けるようなことはしないで欲しい。
特に政治家の先生達には、こうしたシステムをご自分達の尺度だけで決めることは避けていただきたい。
「週休3日制」はあくまでも我々、働く側の主体性に任せて欲しいのである。
株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介
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