【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第94回 17年目の引っ越し 2021年8月25日配信

この夏、17年ぶりにオフィスを引っ越した。

数年前からずっと考えていたことだったが、今回大きな転機となったのは、ここ1、2年の間にパートナー様にお伺いした際、多くの会社さんで斬新なスタイルにイメージチェンジしたオフィスを見せつけられたことである。

例えば、エントランス近くに営業やエンジニアが一堂に集まりコーヒーを飲みながらミーティングできるスペースを設けたり、営業職向けにフリーアドレスを導入し自由な所でパソコンを使って業務ができたり、新たな働き方を実践していた。

また、卓球台を設けたり、定時後用のビールサーバーがあったりと、社員が伸び伸びと仕事をできる様々な工夫が施されていた。正直とても『羨ましい!!』と感じた。

一方で、コロナ禍でリモートワークが進み、オフィスを縮小する企業が続出する中、今本当にオフィスを広げることが正しい方向なのか随分悩んだりもした。

メディアによると、リモートワークはコロナ禍が終息した後も多くの企業が推進し、一段と当たり前のことになっていくだろうとのことである。私はリモートワークの推進とオフィスの拡張はそれほど相反することではないとし、やりたいようにやろうと決めた。

当初は、オフィスは利便性が良く手頃なコストならロケーションはどこでもいいと考えていた。

しかし社員の生活を思えば、働きやすさが第一優先である。これまでの生活スタイルが大きく変わらないように、最寄り駅は従来と同じ秋葉原駅がベストだと考えた。また、前のオフィスは2つのフロアに分かれていて使い勝手が悪かったので、ワンフロアを絶対条件とした。

不動産屋さんにお願いして、秋葉原を中心に片端から探してもらったが、どこのオフィスも“帯に短し襷に長し”だった。

今回の場所が決定するまで1年以上も費やしただろうか。

そしてようやく見つかったのが、秋葉原駅前の31階建てのビルである。秋葉原駅周辺では一番の高層ビルだそうだ。“良さそうだ! やっと見つかった”と幹部達とワクワクしながら内覧に訪れた候補ビルの19階、それは予想以上の環境とビューだった。

秋葉原の周辺が360°見渡せる素晴らしい眺望で、真下には新幹線も走っていて、JR線が一望できる。なんといっても、スカイツリーがドーンと見えた。そんな子供のような衝動に駆られた。秋葉原駅から徒歩2分の距離は、真夏や雨の日などの通勤はとても楽になろう。

また、我々のフロアのちょうど1階上(20階)には100名以上が利用できるレストランもあり、さらに大学などでよく見かける階段状になった大型コンベンションルームなども併設されていて、利便性が極めて良さそうな環境だ。

場所はこのように決まった。
場所が決まれば、後は夢にまで描いたオフィスのレイアウトである。

ここはコンペで選んだデザイン会社に依頼し、思い切り夢があるレイアウトをお願いし、3か月ほどで制作してもらった。

デザイン会社さんの紹介でオフィス家具を見に行ったのも楽しかった。幹部達は社員が毎日使う椅子にこだわり、超高価な椅子を200脚も購入。これにはびっくり。今回、古い家具はすべて捨て、家具や内装などもすべて一から制作してもらうことにした。そのお陰でコストはウナギ昇りだったが、できあがったデザインは十分満足できる結果となった。

そして、今回の8月2日からの入居となったのである。

今、オフィスの入口から広がるフリーエリアにはたくさんの植物が飾られていて、誰でも座れるソファーセットが5つもある。また、スタンディングデスクやカフェブースも人気だ。私は毎日あちこちに座って、社員と話すのを楽しんでいる。

思い起こすと、今回のオフィスは創業から6番目である。

初めて入居したオフィスでは、社員は私ともう一人の2名のみだった。デスクも5人分だけ、まるで“ウナギの寝床”のような細長い場所だった。それでもできるだけ面白く、そして強気にビジネスをやりたかったので、ロケーションだけはエキサイティングな赤坂TBSの真ん前にある場所を選んだ。

数か月後には以前の会社から私を頼って3名の社員が移ってきたが、給料は払えないので“出世払いなら”という条件で了解してもらった。今では考えられないブラックである。

それから1年も経たないうちに、運良くある大手コンピューターメーカーから自社パッケージのOEM商談が舞い込んできた。この最初の売上のおかげで、半年後ようやく社員へ給料を支払うことができたのである。ここまではまさに綱渡りの毎日だった。

その後も運良く注文が増え社員も増えてオフィスが手狭になり、1年余りで2番目のオフィスへ引っ越すことになった。

探したのは京橋にある古いビルである。すぐ近くには明治屋のビルなどがあった。ラッキーなことに仕事のほうも開発したパッケージ商品が順調にヒットし、大口の注文が次々と舞い込んだ。そのため社員を急増し、3年も経たないうちに、次のオフィスを探すことになったのである。

3番目に引っ越したのは御茶ノ水にある研究社ビル(旧)である。ここは研究社の本社ビルで、クオリティが素晴らしい建物だった。

御茶ノ水は大学の街であり、通勤やランチのときには多くの学生さん達とすれ違った。ビルの横には神田川が流れ、近くには聖橋やニコライ堂などもあり、情緒が漂う町並みだった。ここでもビジネスは順調に拡大し、従来のビジネスソフトに加えて、当社初のコンシューマー向けソフト「まいと~く」を販売することになった。このソフトは我々の想像をはるかに超えベストセラーになった。

しかし数年もするとこのパッケージはWindowsに標準搭載された無料のIE(Internet Explorer)に押され、業績が低迷し、これまで順風満帆だったビジネスに初めてブレーキがかかったのである。

しかし、それでもビジネス向けのパッケージは順調に売れ、それに伴い社員数も増え続けたので、フロアをさらに拡張するため4番目のオフィスに引っ越したのである。

今度は、北上野にある住友不動産の大きなビルだった。横幅が30メートルほどもある大きなフロアで、柱が1本もなく使い勝手はとてもよかった。ただ、これまでと違って家賃は段違いに高く、また最寄り駅から遠かったこともあり社員にはあまり人気がなかった。業績の低下もあり、10年も経たずに次のオフィスを探し始めることになったのである。

そして、その次の5番目のオフィスが最近まで入居していた、秋葉原駅と浅草橋駅の間にあったビルである。ここでは2階と3階を借りていたが、社員はかなり増え、もうワンフロア追加しないとギュウギュウ詰め状態になっていた。

しかし、そのワンフロアが何年たっても用意できず、とうとう最長の17年も入居してしまったのである。

本当に色々なことがあった。それぞれのオフィスにたくさんの思い出がある。そして来年は創業40周年だそうだ。コロナが落ち着いたら、この新しいオフィスのフリーエリアを最大に活かして社員と大パーティーをやろうと思う。

皆様、お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

写真:新オフィスのご紹介(お知らせ「本社移転、新オフィスで業務を開始」)

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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