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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第96回 デジタル遺産 2021年10月20日配信
最近、デジタル遺産という耳慣れない言葉をテレビやネットで聞くようになった。
ちょっと調べてみるとデジタル遺産とは、パソコンやスマホなどに取り込まれた、特に金銭に関わるデジタル情報のことらしい。そういえば私の自宅や会社のパソコン、スマホなどにも様々なお金に関連する情報が入っている。
毎月会社から配付される給与明細書、預金口座の管理一覧、保有している株式や投資信託の情報、テレビショッピングや通販サイトの購入履歴、水道、ガス、電気など光熱費の管理一覧、ケーブルテレビの基本料金や有料チャンネルの請求書、スマホ本体やネットの利用料金など多岐にわたる。
また、毎月送られてくるサプリなどのサブスクリプションサービスの請求書も含まれる。決済方法をコンビニ払いにしたときは、領収書をスマホで撮りデジタル化までしている。
金銭とは直接関係ないが、私の趣味であるSAX練習用に購入したデジタル楽譜やバッキングトラックのダウンロード音源なども入っている。また友人や親戚の住所録、撮り溜めてきた写真なども大量にある。
こうした情報にはすべて暗号化やパスワードをかけてあり、私以外は参照できなくなっている。
また毎年3月近くになると確定申告が始まる。これに備えて医療費の領収書や源泉徴収票、株式や投資信託の証明書、固定資産税に関わる明細などもすべてパソコンで管理するようにしている。
以前はすべて「紙」で整理していたが、インターネットの普及に伴って、今では取り扱いが容易なExcelファイルやPDFファイルなどにしてパソコンで管理している。
メディアによると、こうしたデジタル情報で、特にお金に絡み財産の一部とみなされる情報は法律上「動産」として定義され、土地や家屋などのような目に見える「不動産」とは区別して扱われるとのことである。
ところが最近、この目に見えないデジタル情報でいくつかの問題が出始めてきた。私の場合、数年前にこんなことが起こった。
会社のパソコンをリプレイスした際にアクシデントが発生したのだ。
あるアプリでサインオンしたはずのアカウント情報を失念し、元の状態に戻すまで作業ができなくなるという厄介なトラブルに見舞われた。
普段パスワードなどは忘れないよう手帳に書き写しておくのだが、このときはついつい無精してしまった。これが後々あだとなり、何か月間も同アプリの業務が進められず大変不自由な日々を強いられてしまった。
またこんなアクシデントもあった。私は以前からITが苦手な奥方のスマホを管理しており、アプリのインストールなどを引き受けている。しかしあるとき、うかつにも彼女のApple IDをなくしてしまったのである。
奥方の大事な友人からLINEでつながりたいとの連絡があった。奥方からLINEのインストールを頼まれたものの、Apple IDが見つからず日にちだけが過ぎていった。その間奥方から「まだかまだか……」の督促の風が吹き続けた。
もちろん今では使えるようになったが、LINEが動き始めるまで私の肩には重いオモリがのしかかっていた。あのときは奥方には随分やきもきさせてしまったな~……。
私はこの2つの出来事のおかげで、パソコンなどに蓄積されている情報が簡単に取り出せなくなると、後々様々なトラブルに巻き込まれることを身を持って知った。
また、数年前に急性心筋梗塞で病院へ担ぎ込まれたことがあった。幸いにして1か月ほどで退院できたが、もしあのとき、病状が重く何か月も寝たきりだったら、誰も私のパソコンがわからず、データも取り出せず、様々な支払いにも気付くことなく大変な事態になっていたかもしれない。
誰でも、突発的な事故や病気などで長期間会話ができなくなる可能性はある。
そうなった場合、例えばパソコンやスマホに入っているファイルやアプリなどはどうなってしまうのだろうか? パスワードなどがわからなければ、家族でも所有者のスマホは使えないのである。
今、こうしたパソコンやスマホに入っているデジタル遺産をめぐってトラブルが急増しているとのこと。デジタル情報は、土地や家屋などの「不動産」と同様に、法律上は相続人がその所有権を持っているとのことである。
さらに重大な問題は、デジタル遺産の中身が不明なまま、所有者が亡くなってしまうケースである。そうなると家族は所有者がネット上でどのようなサービスを使っていたのか不明のままである。
有料の音楽アプリや動画配信アプリなどの契約が継続された状態になっていると毎月の使用料が課金されたままとなってしまう。銀行やネット証券などの場合ではどのような取引をしていたのかわからず、株式や投資信託の口座があったら預かり料や運用手数料などが自動的に引き落としされているかもしれない。
またカードローンやキャッシングサービスを借りたままになっていれば、家族の知らない間に返済が遅れ、金利がどんどん膨れ上がってしまうだろう。これは高齢者だけに限った問題ではなく、若者にだって起こりえることだ。
ネットやスマホは我々の生活に大きな利便性やメリットを与えてくれたが、一方で大きなリスクも伴っている。
こうした機器をうまく活用していくには、やはり普段からデジタル情報には注意を払い、できるだけデジタル遺産の整理などをやっていくことや、特に高齢者などは生前からパソコンのファイルに入っているデータを見直しエンディングノートなどを作っておくことが重要になるだろう。
皆様もエンディングノートを考えてみてはいかがでしょうか?
株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介
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