【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第97回 シルバー民主主義の崩壊 2021年11月17日配信

今4つの病院を掛け持ちで通院している。

よく行くのは千葉県柏市にある慈恵医大の循環器内科と東京にある同医大の耳鼻科である。もう1つはこれも柏市にある腎クリニック、そして昨年白内障で手術を受けたお茶の水にある井上眼科である。各病院とも定期検診のためだ。

歳をとればこのくらいは普通ではないかと思っている。各病院とも2~3か月に一度の割合で行くので、ほぼ毎月どこかの病院でお世話になっている。

奥方も私と同じくらい色々な病院に行く。来年早々には、腰椎の手術も予定している。二人暮らしの我が家ではどちらかが、どこかの病院に通う日が多い。

確定申告の時期になると医療費のトータル金額の多さにビックリする。まあ、健康第一と思い、時間とお金をたっぷりかけている次第だ。

さて、どこの病院も朝早くから患者で一杯である。特に私と同年代の人が目に付く。私も40歳台ぐらいまでは、病院には年に1、2回お世話になるぐらいだったものだ。よく病院はシニアの社交場などと冗談を言う方もいるがそんなことはない。本当に病気で困っている人達があふれているのだ。

日本はいつからこんなに医療を受ける人が多くなったのだろうか。日本人の平均寿命が延びたせいかもしれない。歳を重ねれば誰しも病気の1つや2つ抱えるのは当たり前なのだ。

団塊世代(1947年~49年生まれ)の人達が、あと数年経つと「前期高齢者」から「後期高齢者」にシフトするのをご存知でしょうか? いわゆる2025年問題というやつである。約800万人の人達が75歳以上となり「後期高齢者」入りをする。しかしこの呼び方はどうも好きになれない。

私が中学生のときは1クラスが60人で11クラスもあった。しかし今では少子化が進み、1クラスの平均は30~40名で3~4クラスほどらしい。知らなかったとはいえあまりの違いに愕然とする。我々高齢者を支えてもらう日本の将来は本当に大丈夫だろうか?

こんなことを考えていた、つい1~2週間前、第49回目の衆議院議員選挙が行われた。皆さんも投票へ行かれたと思いますが、結果はいかがでしたか?

私は小選挙区も比例代表も共に思い切って革新系の野党へ一票を投じた。なぜなら、ここのところの長期政権で国政の私物化が目に余るように思えてきた。

「桜を見る会」「モリカケ疑惑」「公文書の隠蔽や廃棄」「元法務大臣の大規模買収事件」など。まさに国民を無視した負の遺産のオンパレードとなった。やはり長期政権が続くと政治は腐るのだ。

そんなことから、与党は自公連立の安定路線をそのまま継承し、一方で力のある野党にも頑張ってもらい、与野党間が緊張感を保ちながら政局を進めてもらいたいという考えに変わった。

これまでのような忖度やごまかしが蔓延すれば、従来通り数による論理がまかり通ってしまうのである。そうしたことを避けてもらうため、今回は与党の政策に一番近い受け皿として“是々非々”で挑む革新系の野党へ一票を投じることにしたのだ。

振り返って今回各党の公約は何だったのだろう?

私が思う重点政策を5つあげるとしたら、コロナ対策、経済対策、社会保障、女性の活躍推進、そして環境・エネルギーである。もちろんコロナ対策は最優先課題だ。ただ我々高齢者にとって次にくる政策が何かといえば、将来を見据えた社会保障の問題ではないだろうか。

確か2年前、金融庁の報告会が、夫婦が95歳まで生きるには老後の資産形成として「2000万円の蓄えが必要」と発表し、炎上したことが私の頭の中に大きく残っている。

あれは金融庁としてかなり本音だっただろう。まさにお金がなければ楽しい老後は生き抜けないということを正直に語ったのだ。

社会保障は、国民の病気や怪我、障害、出産、老齢、失業などの困窮の原因に対して、医療や介護などのサービスや必要なお金を給付するという大変ありがたい制度である。

我々の生活を守るこの制度だけは絶対衰退させてはならない。以前、本コラムの『若者よ、選挙に行くな』でも書いたように、高齢者は今の年金や医療システムが減速するようなことは極力避けたい。そのため選挙には関心が高く、テレビでの政権放送や街頭演説などもよく観たり聴いたりする。そして政治家自身も高齢者の意見にはよく耳を傾けてくれる。

しかし最近、今まで政治や選挙に無関心だった20代や30代の若者層がSNSを駆使して自分達の意見を呼びかけるように変わってきたのである。

様々なメディアでの調査でも、政治に関心があると答えている若者は70%近くにもなってきた。そうなると、これまでシルバーばかりにスポットライトが当てられてきた公約が、若者にも向かい始めたのである。

これまでの選挙といえば、「おらが街の先生」として、地元出身の候補者ばかりに投票する傾向があったが、これからの政治は若者層への配慮が必要になってきたということだ。

今、まさにシルバー民主主義が崩壊し始めてきたのである。それは良いことではないだろうか。なぜならこれからの日本は若者が作るのだから。

私は、シルバー世代はしっかりとこの日本の動向を観察し、将来の日本が少しでも良くなる方法があるのか考えるべきだと思う。

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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