隠れ残業のリスクとは? 発生する原因や企業がとるべき対策を解説
従業員が上司などに黙って業務を持ち帰り、就業後や休日に仕事を行うことを「隠れ残業」といいます。近年のテレワークの普及などによって、端末を持ち帰ることが増え、隠れ残業が発生しやすい状況になっています。しかし、隠れ残業は、従業員の健康被害だけでなく、企業にとっても様々なリスクがある行為です。
本記事では、隠れ残業が発生する原因やそのリスクを解説した上で、企業がとるべき対策をお伝えします。
隠れ残業とは申告した時間より長く働くこと
隠れ残業とは、出勤打刻をする前や退勤打刻をした後の時間にも働く、企業へ申告せずに帰宅後や休日の業務時間外に働くなど、申告した残業時間よりも長く働くことをいいます。仕事用のメールやチャットを確認したり、仕事に関する調べものをしたりすることも、業務時間外に行う場合は、隠れ残業に該当します。
昨今はICT(情報通信技術)が進展し、テレワークも幅広く浸透しました。こうした背景もあり、社外に端末を持ち出して業務を行うことは一般化しており、隠れ残業が発生しやすくなっているのです。
また、勤怠管理は一般的に自己申告によるため、隠れ残業を防ぎきれない企業が多いというのが現状です。
隠れ残業が発生する原因
隠れ残業が発生する原因を、大きく3つに分けて紹介します。自社に当てはまるものがないか確認してみましょう。
労働時間に強制的または心理的な制限がある
企業が残業時間を無理に削減しようとしている場合、従業員は強制的に、または心理的に、隠れ残業をせざるをえない状況に追い込まれている可能性があります。
特に、「ノー残業デー」を設定して決まった時間に退勤時間を打刻させたり、残業代を固定してそれ以上残業時間を延ばさないようにしたりしている場合は、隠れ残業が発生しやすい環境だといえます。
業務量や目標設定が適切でない
従業員のリソースに対して適切な業務量ではなかったり、目標設定が高すぎたりする場合にも、隠れ残業が発生しやすくなります。人手不足などによりほかの従業員も同じように忙しく、業務分担について相談しにくいような状況だと、隠れ残業が発生する確率は高まるでしょう。与えられた業務量をこなし、目標を達成するためには、就業時間外に業務をせざるをえない状況になってしまいます。
テレワークなどにより勤怠管理が難しい
テレワークやフレックスタイム制など、働き方の自由度が高い企業では、従業員の勤怠管理能力の低さが原因で、隠れ残業が発生することがあります。例えばテレワーク環境では、従業員の業務の進行状況を把握することが難しくなり、管理者によるサポートが行き届かない場合があります。こうしたケースでは、勤怠管理は個々の従業員任せになってしまいがちです。
そのような環境で、従業員自身のタイムマネジメントや進捗管理がうまくいかないと、業務が一時期に集中してしまうなどして、隠れ残業が発生する可能性があります。
隠れ残業のリスク
隠れ残業を企業が放置した場合、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、4つの具体的なリスクを紹介します。
長時間労働による従業員の健康被害
隠れ残業による長時間労働は、従業員が本来、休養にあてるはずの時間も業務に割くことになるため、従業員の心身の健康を害するリスクとなります。
特に、テレワークで隠れ残業が常態化すると、休憩時間や睡眠時間を十分に確保できなくなるかもしれません。テレワークの場合、企業が従業員の労働時間を正確に把握しにくいこともあり、適切な対策が難しくなります。
モチベーションの低下を招く
隠れ残業が発生するということは、企業に対して正確な残業時間を申告できない、大量の業務を申告せずに自分だけでこなしている、というような状況なので、従業員のモチベーションを低下させるリスクにもなりえます。
企業や労働条件に対する不満も溜まりやすく、最悪の場合は離職にもつながりかねません。
管理者による業務量の把握・適切な分担が難しくなる
隠れ残業で行われた業務を管理者が把握できず、業務量や分担が適切かどうか判断できないというリスクもあります。残業時間の申告がないため、管理者側からは本来かかった時間よりも短時間でこなしたように見えます。一定の業務をこなすために必要なリソースを正確に把握できなくなるので、従業員に対して適切な業務量を振り分けることも難しくなってしまうのです。
その結果、業務量が多すぎる、目標設定が高すぎる、といった隠れ残業の原因を招き、隠れ残業の常態化にもつながってしまいます。
賃金未払いによる労働基準法違反
隠れ残業を企業が放置してしまうと、賃金の未払いによる労働基準法違反に該当する可能性があります。労働基準法違反となった場合、次のような指導や罰則を受けることになります。
- 労働基準法違反の指導・罰則
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- 労働基準監督署から是正措置を求める監督指導が入る
- 労働基準法違反による罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)
- 未払分の賃金は遅延利息を上乗せして支払う
労働基準監督署からの指導や罰則を受けた場合、企業イメージが低下し、顧客や取引先からの信用が失墜したり、採用活動が困難になったりするといった損害が発生する可能性もあります。
隠れ残業の対策として企業ができること
隠れ残業のリスクは大きく、企業の隠れ残業への対策は必須といえます。ここでは、隠れ残業を解消するための効果的な対策を3つのポイントに分けて見ていきましょう。
固定業務を効率化して負荷を減らす
固定業務の負荷を減らして、より成果を求められる業務に集中できるようにすることは、隠れ残業の対策になります。定期的に発生する事務作業や業務報告、資料作成などの固定業務に時間を取られ、勤務時間が長くなってしまい、結果として隠れ残業につながるというケースは珍しくありません。業務時間を適切に確保するために、ITツールを活用して固定業務を効率化することは有効です。
目標や業務分担が適切か見直す
管理者が、従業員の成果物とかかった時間を踏まえて、適切な目標設定や業務分担ができているかどうかを見直すことは、隠れ残業の対策になります。高すぎる目標設定や、不適切な業務量は、隠れ残業の原因となってしまいます。
PCログ管理による客観的な勤怠管理を導入する
PCログ管理ツールで、従業員の勤務時間を、パソコンの利用時間により客観的に把握して管理することで、隠れ残業を防ぐ方法もあります。
タイムカードや勤怠管理システムによる勤怠管理では、基本的に従業員の申告により、業務時間が決まります。テレワーク環境では特に、従業員が何時から何時まで働いているのか、把握しにくい状況です。
PCログ管理ツールを使えば、パソコンの起動時間やシャットダウンした時間を記録し、管理者が確認することができます。また、終業時刻が近づいたら警告を発する、深夜の時間帯は強制的にシャットダウンするなどして、長時間労働を防ぐことも可能です。もし、虚偽の打刻修正申告があったとしても、事実かどうかを確認できるというメリットもあります。
多面的な対策で隠れ残業を防ごう
隠れ残業は、従業員の健康被害やモチベーション低下を招くだけでなく、労働基準法違反による指導や罰則を受けるなど、企業にとってもリスクが大きいものです。業務分担の見直しや勤怠管理に役立つツールの導入など、複数の対策を組み合わせて対応することをお勧めします。適切な労務管理で、従業員が隠れ残業をしなくても業務を完了できる環境作りに努めましょう。
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例えば、パソコンのログオン状況を監視できる「OSログオン監視」機能では、ログオンをできないようにする時間帯の指定や、指定時間外に稼働する端末に対する自動シャットダウンの実行も可能です。残業の延長はリアルタイムログで通知されるため、従業員の業務量の見直しをする際にも役立ちます。
隠れ残業対策をお考えの場合は、ぜひ「MaLion」シリーズの導入をご検討ください。