システム保守とは? 運用との違いや業務内容・外注の判断基準

システムは導入して終わりではなく、継続的なメンテナンスやトラブル対応が欠かせません。そこで必要になるのが「システム保守」です。しかし、システム保守の業務内容や役割など、きちんと把握できていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、システム保守の具体的な業務内容やシステム運用との違い、保守業務を自社で対応すべきか外部に委託すべきかの判断基準について解説します。
システム保守とは

システム保守とは、稼働中のシステムに発生するトラブルや不具合に対処し、安定稼働を維持する業務のことです。具体的には、システムの不具合修正、障害対応、パフォーマンスの最適化などが含まれます。
システムが正常に機能し続けるためには、定期的な点検やアップデートが不可欠です。また、潜在的な問題を早期に発見し、未然に対処することもシステム保守の重要な役割です。
例えば、エラーログの監視、セキュリティパッチの適用、データバックアップの実施などがあげられます。これにより、大規模なシステム障害を未然に防ぎ、業務を継続できます。
以下は、業界でよく使用されるシステム例です。
業界 | システム例 |
---|---|
製造業界 | 生産管理システム、部品表管理システム、IoT実績収集システム、勤怠管理システム、人事・給与システム |
金融業界 | 勘定系システム、補完業務システム、営業店システム |
飲食業界 | オーダーエントリーシステム、POSシステム(POSレジ)、顧客管理システム(CRM)、予約管理システム |
旅行業界 | 旅行業システム、行程表・見積書作成システム、予約管理システム |
物流業界 | 配送管理システム(TMS)、運行管理システム、倉庫管理システム、在庫管理システム、ピッキングシステム |
介護・福祉業界 | 介護記録システム、医療・介護連携システム、勤怠管理システム |
ネット通販業界 | 販売管理システム、在庫管理システム、顧客管理システム(CRM) |
システム運用との違い
システム運用とは、システムが日々スムーズに動作し、効果的に利用できるようにするための業務のことです。システム保守と混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。
システム運用では、主にシステムの監視や管理を行い、問題が発生しないように日常的なチェックを実施します。例えば、サーバーの負荷監視、アクセスログの分析、ユーザー権限の管理などです。
一方で、システム保守は、発生したトラブルや不具合を修正し、システムの安定稼働を維持することが主な目的です。つまり、システム運用は「予防的な活動」であり、システム保守は「事後対応的な活動」といえます。
システム保守の重要性
システム保守は、システムの安定稼働を保証するために不可欠な業務です。保守を怠ると、システムの性能が低下し、処理速度の遅延やエラー発生率の増加などの問題が生じる可能性があります。これにより、業務の効率が低下し、最悪の場合、システムが停止して業務が全面的にストップすることも考えられます。
また、システム保守はセキュリティ対策の面でも重要です。適切な保守を行わないと、脆弱性が放置され、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが高まります。特に近年はサイバー攻撃が高度化しており、システムのセキュリティを維持するためには、定期的なセキュリティパッチの適用や脆弱性診断が欠かせません。
システム保守の主な業務内容

以下は、システム保守の主な業務です。
保守の種類 | 概要 |
---|---|
修正保守 | システムに発生した障害やバグを修正し、正常な状態に戻す作業。エラーログの分析や原因特定、修正プログラムの適用が含まれる。 |
適応保守 | ビジネス環境や技術の変化に合わせて、システムの機能を改良・拡張する作業。法改正対応や新規デバイスへの対応などが該当する。 |
完全保守 | システムが正常に機能するように維持管理を実施し、障害が発生する前に対策を講じる総合的な保守活動。定期点検やハードウェア交換などが含まれる。 |
予防保守 | システムの異常を未然に防ぐため、定期的な点検やメンテナンスを実施。ログの監視やパフォーマンスの最適化、部品の老朽化への対応など。 |
予測保守 | AIやデータ分析技術を活用し、システムの故障や劣化を事前に予測し、早めに対策を実施する。 |
システム保守は内製化、外注のどちらが良い?

システム保守の方法として、社内で対応する「内製化」と、外部の専門企業に委託する「外注」の2つの選択肢があります。それぞれメリット・デメリットがあり、自社の状況やシステムの特性に応じた選択が重要です。
ここでは、内製化したほうが良いケースと外注したほうが良いケースについて解説します。
内製化したほうが良いケース
以下の3つのケースに該当する場合は、内製化することを推奨します。
自社に専門的な技術や知識を持つ人材がいる場合
適切なスキルと経験を持つITスタッフが社内にいる場合、システム保守を内製化することで、外部委託費用を削減できるだけでなく、問題発生時の迅速な対応も可能になります。外部に委託する場合、コミュニケーションコストや時間的な制約が発生することがありますが、内製化であればこれらの課題を解消できます。
また、社内のエンジニアがシステムの構造を深く理解しているため、カスタマイズや最適化が柔軟に行える点もポイントです。
システムのカスタマイズや変更が必要な場合
業務プロセスに合わせて頻繁にシステムの調整が必要な場合、内製化することで迅速な対応が可能になります。外部に依頼する場合、変更の度に契約や費用が発生することがありますが、社内で対応できればコストや時間を節約できます。
システム保守を社内で完結させたい場合
将来的にシステム保守を社内で完結させたい場合、ノウハウの蓄積を目的に内製化を選択するのが良いでしょう。一度外注してしまうと、業務プロセスが共有されず、社内に知識が蓄積されにくくなります。
そのため、自社システムに精通した人材を育成したい場合は、最初から内製化を検討することが重要です。
自社でシステム保守を効率良く行いたい場合は、リモートアクセスサービスの「RemoteOperator Helpdesk」をご検討ください。「RemoteOperator Helpdesk」は、離れた場所にあるシステムやサーバーをリモートでメンテナンスでき、急なトラブルにも速やかに対応できます。
例えば、夜間や休日にトラブルが発生した場合でも、リモートで迅速に対応することが可能です。機能制限なしの30日間無料トライアルもあるので、ぜひ試してみてください。
外注したほうが良いケース
以下の3つに該当する場合は、システム保守を外注することをお勧めします。
自社に専門的な技術や知識を持つ人材がいない場合
高度な技術や最新の知識を持つ外部の専門企業に依頼することで、難しい問題にも対応できます。また、専門エンジニアの採用や育成には時間とコストがかかるため、それを省略できる点も外注のメリットです。
コア業務に集中させたい場合
システム保守を外注することで、社内のリソースを商品開発や顧客対応、マーケティング活動などの主要業務に集中させることが可能です。特に、IT部門のリソースが限られている企業では、外注によって業務負担を軽減できます。
短期間での対応や一時的な技術支援が必要な場合
プロジェクト単位での支援や、一時的な技術的課題の解決が必要な場合、外注を利用することでスピーディな対応が可能になります。例えば、システムの大規模アップグレードや新技術の導入時には、外部の専門家の力を借りるのが有効です。また、必要な期間だけ外部に委託することで、コスト削減にもつながります。
セキュリティ対策を強化したい場合
セキュリティに強い専門会社に外注すれば、最新の脅威に対応した高度なセキュリティ対策を導入できます。特に、金融業界や医療業界などの高いセキュリティが求められる分野では、専門会社のノウハウを活用することで安全性を向上させることが可能です。
また、サイバー攻撃対策やデータ保護の強化を目的に、外部の最新技術を活用するのも良いでしょう。
システム保守を外部業者に依頼する際のポイント
システム保守を外部業者に依頼する場合、適切な業者を選定することが重要です。業者の選定を誤ると、対応の遅れやコストの増大、期待した保守サービスが受けられないといった問題が発生する可能性があります。
ここでは、システム保守を外部委託する際に押さえておきたいポイントを解説します。
専門性のある人材が豊富か確認
システム保守を依頼する際には、業者に専門的な知識や技術を持つエンジニアが十分にいるかどうかを確認することが重要です。特に、自社のシステムに関連する技術やプラットフォームに精通したエンジニアがいるかを確認しましょう。
また、担当者が不在の場合でも代わりに対応できる人材がいるかどうかも大切なポイントです。特定の担当者に依存してしまうと、その担当者が不在時や退職した際に対応が滞る可能性があります。組織として継続的に対応できる体制が整っている業者を選べば、長期的に安心して保守を任せられます。
保守の範囲・費用が明確か確認
システム保守を外注すれば一定のコストがかかります。そのため、無理のない予算を設定し、見積りを複数の業者から取得して適正価格であるかを確認することが重要です。一般的に、システムの年間保守費用は開発コストの15%程度が適正といわれています。
また、システム保守の対象範囲を明確にし、業者と事前に共有することも重要です。例えば、以下のような具体的な保守業務の内容を細かく確認すると良いでしょう。
- 障害発生時の対応範囲(軽微なバグ修正、システムダウン時の復旧対応など)
- 定期的なメンテナンスの有無(セキュリティアップデート、パフォーマンス改善)
- 24時間365日対応が必要か、それとも営業時間内のみの対応で十分か
さらに、契約書に保守範囲を明記し、曖昧な点をなくすことも、後々のトラブルを防ぐためのポイントです。
契約期間・自動更新の内容を確認
システム保守は長期間にわたることが多いため、契約期間を明確にし、必要に応じて柔軟な契約ができるかを確認することが大切です。契約期間が長すぎると、途中で業者を変更したい場合に不利になる可能性があります。一方で、短期間の契約では毎年契約を見直す手間がかかるため、自社にとって適切な契約期間を選びましょう。
また、契約の自動更新に関する条項も確認し、更新時の条件や手続きを把握しておくことが重要です。解約を希望する場合の手続きや、更新時に費用がどのように変動するのかも事前に確認しておくと安心です。
まとめ
システム保守とは、システムが安定して稼働し続けるよう、不具合の修正や性能の最適化、セキュリティ対策を行う業務のことです。適切なシステム保守を実施してトラブルを未然に防ぎ、長期的な安定稼働を実現しましょう。